3、帰る
「さてじゃ、改めて。あたしは花子。こっちは正人(まさと)」
花子ちゃんと、正人くんか。うんうん頷いて、ぼくも自己紹介をする。名前を名乗ると、花子ちゃんがぴょんと眉を上げた。
「虎郎?勇ましい名前ね」
「ぼく、すぐ力が抜けて首が落っこちちゃうから、ころんころん転がる。で、ころうなんだけど」
「由来は情けなかったわね」
花子ちゃんの言葉に、てへへと笑う。本当は頭でも掻きたいところだけど、手がないので代わりに空中で揺れておいた。
「それでえぇと、君の体まで連れて行った方がいいかな?一人で帰れる?人の少ない所までは連れて行った方がいいよね」
正人くんがそう言って、ぼくは、大丈夫だよと言いかけて。
「…………」
「虎郎君?」
「…………」
正人くんの言葉には答えず、ぼくは開いていた窓からふらふら外に出て、周りを見回す。うん。うーん?
「…………」
くるくる回っていると、伸びてきた手に掴まれてしまう。
「人に見つかると驚かれちゃうからね」
「…………」
正人くんの腕に包まれて、ぼくはぐるぐると考えた。うーん。
「あのね、ぼく、体がどこにあるか分からないみたい。というかぼく、どこから来たんだろう」
正人くんが、目をまん丸にした。
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