2、抜け首
抜け首。っていうのは、ろくろ首の一種で、首が伸びるんじゃなくて、体から首が離れちゃうのをそう言うの。国が違えば飛頭蛮とか言ったりもするわね。 ふーん。 ほんとなら首は空を飛べるんだけど、空腹のせいで飛ぶ力がなかったってことでしょうね。 そうなんだ。 体に戻れないと死んでしまうって聞いたこともあるんだけど、この様子だと、とりあえずは大丈夫そうよねぇ。 そうだね。
目の前の男の人と女の子がそんな風に会話するのを右に左に聞き流しながら、ぼくは口を開けて、咀嚼して、飲み込んで。そんなことをしばらく続けていた。つらつらとしゃべる女の子の言葉に適当に返事をしながら、男の人がぼくの口にスプーンを運んでくれて、短く切られたぬるめのうどんが口の中に飛び込んでくる。だしのよく効いたうどんは、何日も食事をしていなかったぼくの、ここにはない体によく染みた。
「えーと、抜け首、君?まだ何か食べる?」
「ううん。もう大丈夫」
男の人の言葉に答えて、よいしょと立ち上がるような要領で力を込める。すぐにぼくの首はふわりと浮き上がった。
「おかげでお腹いっぱいになったよ。ありがとう」
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