解決屋道中四方山話

須堂さくら

1、どんぶらこ

 むかしむかしあるところに。という言葉で始まる物語のひとつに、何だかこんな状況があった気がするなぁ。なんてことを考えながら、ぼくはどんぶらこと川を下っていた。とある果物限定の表現だった気もするけれど、そんなことはどうでも良かった。

 川に落ちてどれくらい経つだろう。ぼくってこの状態だと水に浮くんだなぁ。落ちたのが川でまだ良かったんだろうか。あぁそれにしても。

「生きてるわよ!早く!」

 水に浮かんだぼくの耳に、女の子の大きな声が聞こえて、ぼくは目を開いた。だけど太陽の光が眩しかったので、すぐ目を閉じる。

「じゃああれやっぱり人じゃないんだね!?」

 今度は男の人の声。何だか少し、うんざりしているような。

 急に波が高くなって溺れそうになって慌てる。ざばざば音が聞こえたかと思うと、ぼくの頭は誰かの手にがっしり掴まれて、水から引き上げられた。

 目を開く。まん丸目をした男の人と目が合った。

「うわぁほんとに人じゃない」

「だから最初からそう言ってるでしょう?こんにちは、抜け首さん。体をどこに落としてきたの?」

 男の人の後ろから、女の子が顔を覗かせる。何か問いかけられていたけれど、ぼくはといったら。

「お腹がすいたよぅ」

 もう、それしか考えられなかった。

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