27 物語

 むかしむかしあるところに、女がひとりおりました。右目の上あたりから口の横にかけて青いあざのようなもので覆われていて、それがどうにも恐ろしげだったので、周りの人たちからは遠巻きにされておりました。

 女は村の外れで、おばあさんと二人で住んでいました。おばあさんは変わり者で、村から少しだけ距離をとって暮らしていて、周りの人たちから遠巻きにされていた女を自分の家族のように大事に大事に扱ってくれました。

 女は、ほんの小さな頃から、どこかぼんやりとした子供でした。周りの人たちからどんな風に思われているかさえ、ほとんど気にしていないように見えました。周りの人たちがあまり関わってこないことを、苦にしているようでもありませんでした。ただひたすらに、そこにあるものを受け取る。そんな子供でした。

「――――」

 おばあさんに名前を呼ばれると、女はぱっと笑います。その顔がとても愛らしいことを、おばあさんだけが知っていました。

 どこかぼんやりとしたところはあるけれど、愛らしくて気持ちの優しい女のことを、おばあさんはいつも心配していました。自分がその子を残していくだろうことは分かりきっていましたから、残ったその子がどう生きていくか、おばあさんはいつも心配していました。

 どうか、誰かがこの愛らしい子の名前を呼んで、大事に大事にしてくれますように。おばあさんはずっと、そんな風に願っていました。

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