27 物語
むかしむかしあるところに、女がひとりおりました。右目の上あたりから口の横にかけて青いあざのようなもので覆われていて、それがどうにも恐ろしげだったので、周りの人たちからは遠巻きにされておりました。
女は村の外れで、おばあさんと二人で住んでいました。おばあさんは変わり者で、村から少しだけ距離をとって暮らしていて、周りの人たちから遠巻きにされていた女を自分の家族のように大事に大事に扱ってくれました。
女は、ほんの小さな頃から、どこかぼんやりとした子供でした。周りの人たちからどんな風に思われているかさえ、ほとんど気にしていないように見えました。周りの人たちがあまり関わってこないことを、苦にしているようでもありませんでした。ただひたすらに、そこにあるものを受け取る。そんな子供でした。
「――――」
おばあさんに名前を呼ばれると、女はぱっと笑います。その顔がとても愛らしいことを、おばあさんだけが知っていました。
どこかぼんやりとしたところはあるけれど、愛らしくて気持ちの優しい女のことを、おばあさんはいつも心配していました。自分がその子を残していくだろうことは分かりきっていましたから、残ったその子がどう生きていくか、おばあさんはいつも心配していました。
どうか、誰かがこの愛らしい子の名前を呼んで、大事に大事にしてくれますように。おばあさんはずっと、そんな風に願っていました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます