26 故郷

「じゃあ、あおくんのお父さんもお母さんも違うところから来たんだね」

 お正月に、お父さんとお母さんの実家に行ったっていう話をしていると、みちるさんがそう言った。

「うん。お母さんは元々この辺りの人だから、そんなに違うところでもないけど」

「そうなんだ」

「みちるさんは、元々住んでた所のこととか覚えてる?」

 僕の言葉に、みちるさんはうーんと首を傾ける。これで倒れないんだから器用だな。

「全然覚えてないかなぁ。獣を捕まえたり、魚を釣ったりしていた気はするんだけど」

「それじゃあ自然がいっぱいのところに住んでたんだね。だからみちるさんは山の中にいることが多いの?」

「そうかなぁ?そうかもしれない」

 みちるさんのふるさとは、一体どんな所だっただろう。ずーっとずーっと昔から生きているみちるさんのふるさとは、きっと今場所が分かっても全然違う風になってしまっているんだろうけど。

 教科書で見た昔の人の服を着たみちるさんを想像してみる。釣竿を担いだ男の人の体にみちるさんの頭をくっつけてしまって吹き出しそうになった。

「あおくん、にやにやしてる」

「ごめん、ちょっと変な想像をしちゃった」

「変な想像?どんな想像?」

 きょとんと見つめるみちるさんに、僕は視線を逸らす。

「内緒」

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