21 飾り

「ただいま」

「おかえり。あおくん」

 恥ずかしい気持ちで戻ってくると、みちるさんの笑顔に迎えられた。

「ごめんね。いっぱい話しすぎちゃったね」

「ううん。僕もごめん。せっかく色んな話、してくれたのに最後がこんなで」

「わたしはわたしが話したかったことを話しただけだもん。聞いてくれてありがとうね」

「うん。僕はちゃんと、覚えてるからね」

「うん」

 にっこり笑うみちるさんに、僕も笑って、それから椿を箱から取り出す。

「普段は動くのに邪魔にしかならないと思うけど、これね、髪飾りになってるんだ」

 ぱちんと瞬くみちるさんの髪を少し整えて、椿の髪飾りを噛ませる。

「うん。やっぱりすごく似合う」

 みちるさんの少しだけ茶色くなった髪の毛に、赤と黄色で可愛らしく作られた椿は、よく似合っていた。

 ぱちんともう一度瞬いたみちるさんの頬が、ほんのり赤くなる。

「にひひ。髪飾りかぁ。そっかぁ。嬉しいな。つけるの、初めてかもしれない」

「動くのには多分邪魔になっちゃうと思うけど」

「うん。特別な時につけてもらうね。ふひひ。ありがとう」

 にひひ、とか、いひひ、とか、謎の笑い声をあげながらみちるさんがにやにや笑ってぐねぐね動く。こんなに喜んでもらえるとは思ってなかったけど、僕も何だか嬉しくなって、もじもじしながら一緒に笑った。

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