20 たぷたぷ

 首だけでできることも、いっぱいあるんだよ。色んな所に行くこともできるし、泳ぐこともできるし、頑張ったら木にも登れるし、多分、ただ生きていくだけなら一人だけでもできるのかもしれない。だけどやっぱり、わたしは人だったから、人と一緒にいられたら嬉しいなぁって思うんだ。わたしを見てもあんまりびっくりしない人が時々いて、そんな人たちと一緒にいられたら嬉しいなぁって思うんだよ。だからね、あおくん、ありがとうね。


 みちるさんが、にこにこ笑う。僕は、僕は。

「あのね、みちるさん」

「うん?」

「おトイレ、行ってきてもいい?」

 長い長いみちるさんの話をうんうん聞いている間、僕は肩から下げていた水筒のお茶を全部飲み干してしまっていた。お腹はいつの間にかたぶたぶになっていたし、すごくトイレに行きたくなってしまった。

 みちるさんが目を丸くする。

「わぁ、もれちゃったら大変だ!早く行っておいでよ」

「ごめん!ちゃんと戻ってくるから!」

「うんうん。待ってるよ」

 にっこり笑ったみちるさんに見送られて、僕はダッシュでハウスを出た。

 何だかもう、格好がつかないなぁ。

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