16 面
「あ、あおくん。こんにちは」
「こんにちは。みちるさん……何かあった?」
今日のみちるさんは、いつものみちるさんと少しだけ違っていた。いつものぱっと弾けるような笑顔がなくて、無表情に近い。まるでお面でもつけているみたいに。
そんな顔をしていると、青いあざがいつもより痛そうに見えて、何だかそわそわしてしまう。
「うーん。あのね、あおくん」
お面の顔が、眉を下げる。
「何だかね、何だか、さみしくなっちゃったんだ。わたし」
「さみしく?」
「うん。むぅちゃんが来たんだ。よっちゃんの子供の女の子」
むぅちゃん、というのは多分、よし子さんの一番下の娘で、早くに家を出ていた人だろう。確か、むつみさん、といっただろうか。
「全然覚えてなかったの。わたし。むぅちゃんって、仲良くしてたのにって言われたの。なのに全然思い出せないんだ」
あーあ。と、みちるさんが声を上げる。
「むぅちゃんはよっちゃんと似てたから、面影がないわけじゃないと思うんだよ。なのに何にも覚えてないの。残念だなぁって」
ころんころんと揺れるみちるさんを見ながら、僕は座布団に座る。揺れていたみちるさんがころころ転がって僕の方に向かってきて膝に乗り、ぴょんと跳ねてテーブルの上に乗った。
「あおくんちゃんとお顔を見せて」
「うん」
みちるさんと目を合わせる。
ぱっちりとしたみちるさんの目が、じぃっと僕を見つめていた。
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