15 猫

 よし子さんの家に行くと、縁側にみちるさんが転がっていた。すぐ横に茶色い猫がいて、みちるさんのあざの辺りをぽこんぽこんと殴っている。

「みちるさん」

「あ、あおくんだ。こんにちは」

「えっとそれは、痛くないの?」

「肉球ふにふにで気持ちいいよ」

「そっか」

 みちるさんと猫の隣に腰かけると、猫が顔を上げて僕を見た。そっと手を差し出してみると、ふんふんにおいを嗅いで、ぺろんと指を舐めてくる。

「わ」

「おぉ、気に入られたね。あおくん」

 猫は僕の手に頭を擦り付けたり、ぽこぽこ叩いてみたりしていたけれど、やがて僕の膝の上に乗っかってきて、くるんと丸くなった。

「わぁ」

「あ、いいなぁあおくん」

 ぴょんと僕のすぐ横に来たみちるさんが、丸くなった猫の顔のあたりに鼻を近付ける。猫が一度顔を上げて、鼻同士がこつんとぶつかった。

「撫でてあげなよ。あおくん」

 再び顔を伏せた猫をじっと見た後にみちるさんがそう言うので、僕はそっと、猫の頭に手を乗せてみる。ゆっくり動かしてみると、猫はうにゃだかにゃあだか鳴いて、くるると喉を鳴らした。

「猫は友達なんだ。いつもあいさつすることにしてるの」

「そうなんだ」

 さっきのは挨拶の一つだったのかな?

「ぬふふ気持ちよさそうだ。さすがあおくんだね」

 みちるさんが楽しそうに言う。それから首を傾けて僕の太ももにくっつける。ほんのり暖かく日のさす縁側で、僕たちはしばらくそうして座っていた。

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