14 月

「あ、月だ」

 みちるさんの声に顔を上げる。薄青の空の向こうに、うっすらと月が見えた。

「わたしねぇ、月は夜より昼見た方が好き。夜の月はちょっぴり眩しいから、見るのには向かないんだよね。下を歩くのには向いてるけど」

「……みちるさん、目がいいんだね」

「目はいいよ。何でも見える」

 ぬふふ。とみちるさんが笑う。みちるさんは笑い声のバリエーションがなかなか多い。

「鼻もいいよ。あおくんの今日のお昼ご飯はお魚さんだったね」

「当たりだ」

 僕の言葉に、今度はふへへ。と笑い声が返ってきた。

「お昼の月は、薄くて白くてぽこぽこできれいだね」

「……ぽこぽこ?」

「表面がぽこぽこ。えーっと確か、海?があるんだっけ」

「月の海だね」

「月の海もしょっぱいのかな」

「水があるわけじゃないんじゃなかったっけ」

「そうなの?」

「多分」

「そっかぁ。まぁいいや。きれいだからね」

「うん。……綺麗だね」

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