10 来る
「明日は絶対来てね!よっちゃんち!集合!」
みちるさんがはしゃいだ声でそう言ったので、僕は二日連続でよし子さんのお家を訪ねた。
いつものようにのんびり出迎えてくれたよし子さんが、のんびり部屋に案内してくれる。いつも通してくれる居間は、いつもと違って扉がぴったり閉じられていた。
ぴったりと閉じられた戸の前に立って、よし子さんがにっこりと僕に笑いかける。そして僕の手に何かを握らせた。
「せーので開けるから、鳴らしてあげてね」
「えっ?」
混乱しながら握ったものを見るとクラッカーで、よし子さんは笑うだけで何も言ってくれなくて、混乱しながら紐を握る。
合図と一緒に戸が開いて、僕は紐を引っ張った。
「わーい誕生日おめでとー!ありがとー!」
パン!とはじける音と同時にはじけるようなみちるさんの声がして驚く。部屋の中でごちそうを背にしたみちるさんが跳ねていた。結構高く飛べるんだな、みちるさん。
「……えっ、誕生日?誰、みちるさんの?」
「そうだよー。本当はいつだか覚えてないから、ここで人に出会った日を誕生日にしてるんだ。あおくん、来てくれてありがとう」
「えっ、え、プレゼントとか、何も……」
「いらないよー。よっちゃんがごちそういっぱい準備してくれたから、一緒に食べよ」
にこにこ笑うみちるさんに、よし子さんを振り返ると笑って頷かれたので、そっと部屋に足を踏み入れる。ぴょんぴょん跳ねるみちるさんが示してくれた座布団に座る。
「あ、みちるさん」
「どうしたの?あおくん」
「お誕生日、おめでとう」
「うん、ありがとう!」
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