8 鶺鴒(セキレイ)
いつもは僕が抱えて移動するみちるさんだけど、時々自分で歩きたいという時がある。今日もそんな風で、みちるさんは鼻歌を歌いながらころころ転がっていた。
いつもよりゆっくりした速さで歩きながらみちるさんを追いかけている途中、みちるさんがぴたりと止まる。
「あおくんあおくん抱えて!」
「えっ、うん」
のんびりしたみちるさんには珍しく結構な勢いで言われて、驚きながら抱え上げると、僕の腕の中でみちるさんが「シャー!」と威嚇するような声を上げた。
「どうしたのみちるさん」
「鳥は天敵なんだよぅ。つついてくるの。くちばしが痛いんだ」
道の先には一羽のセキレイがいて、ぴこぴこ尻尾を揺らしながら歩いている。
「人が近づいたら逃げていくから大丈夫だよ」
「わたしが近づいても逃げていかないもん」
「みちるさんは人とはちょっと違うしなぁ」
「むむぅ」
ぴこぴこ揺れる尻尾を眺めながら近づくと、セキレイは僕に気づいてちらりと顔を持ち上げて、首を傾げて見せた後飛んで行った。
「ほらね」
「ぬぬぅ」
くるくる回っていたせいで、絡まってしまっていた髪をほどいてやる。髪の毛が真っ直ぐになるのと一緒に、みちるさんも目を細める。
「あおくんはてくにしゃんさんだね」
「てくに……なんて?」
「気持ちいいからもっとしてくださーい」
何だか分からないけどそれからしばらく、僕はみちるさんの頭を撫でさせられた。
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