6 眠り

 ふわぁ、と、みちるさんが大きなあくびをする。

「まぁ長い旅の話はまた聞かせてちょうだい。疲れているんでしょう?起こしちゃって悪かったわね」

「んーんー。しばらくぶりに気持ちいいからやっぱり眠くなっちゃうね。最近ちょっと寒かったし」

「そうね。ゆっくり休んで」

「うん。おやすみよっちゃん。あおくんも」

「お、おやすみなさい」

 みちるさんが僕を見て、にこりと笑って、どういう仕組みか分からないけど首をごろごろ揺らした後に目を閉じた。すぐに寝息のような音が聞こえてきて、それをなんとなく見守るととんとんと肩をたたかれる。

 微笑んだよし子さんが出入口を指さしたので、僕は頷いて立ち上がった。


 ハウスを出て、よし子さんの家の方向に歩きながら、よし子さんがのんびり言う。

「みちるさんはね、見た目はあんなだけど、のんびりした気のいい人だよ」

「人なんですか?」

「人なんだって。元々は普通の人だったみたい。何だが良く分からないけど首だけになって、それでも生きているから、生きているんだって」

「……そうなんだ」

 生きているから、生きている。かぁ。

 首だけのみちるさん。怖いけど、あんまり怖くないみちるさん。あの人、人?人とはあんまり思えないけど、みちるさんは、案外とってもシンプルに生きているのかもしれない。

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