3 だんまり
クラブ活動が終わって学校に戻り、家に帰ってきた僕は、ランドセルを放り出してまた家を出た。向かうのはもちろん、よし子さんのお家だ。
さっきの木の上の毛玉について、あとで教えてあげるから、皆には内緒よ。と言われていたのだった。
あれが何なのか気になる気持ちと、詳しくは知りたくない、少しだけ怖がる気持ちとを抱えて、僕はよし子さんのおうちの呼び鈴を鳴らす。待っていてくれたのか、すぐにドアが開いて、よし子さんが出迎えてくれた。
「あおくん、いらっしゃい。さ、上がって」
「おじゃまします」
にっこり笑ったよし子さんの後について、居間に上がらせてもらう。座布団の上に座ると、よし子さんがあったかいお茶を出してくれた。
「さっきはごめんね。びっくりしたでしょう」
「あれって、何なんですか?髪の毛の塊みたいに見えたんだけど」
僕がそう言うと、よし子さんは頬に手を当てて、そうねぇ。と小さく呟いた。
「あれはね、何て言ったらいいのかしらね。私にも何なのか良く分からないし、あの子自身も自分が何なのか良く分かっていないのだけど」
「話ができるんですか?」
「あぁ、そうね。あの子は……みちるさんって言ってね、簡単に言うと人の首なのだけど」
「人の首!?」
「そう言うしかないのよねぇ。私のお母さんのお母さんの、ずーっと昔からうちの山に住んでいるのよ」
みちるさん、という首だけのお化け?は、よし子さんの持っている山を住処にしているそうだ。山の中に入ったときに現れたり、家にやってきたりするので、あれこれ世話をしていたらしい。どう聞いたってお化けなのに、よし子さんがあんまりのんびり話すものだから、何だか怖いものだとは思えなくなってきた。
「しばらく前から見かけなくなっていて、黙っていなくなってしまったのかもと思っていたのだけれど、また戻ってきていたのねぇ」
みちるさんは、時々そういうことがあるらしい。誰にも黙って姿を消して、何にも言わずに帰ってくる。よし子さんたちにとっては、当たり前にそこにいるもの。
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