2 食事

 校外学習で訪れた山の中で、僕は木の上のある一点から目を離せずにいた。

 自然クラブの活動の一環で、学校近くの山の中に、どんな植物があるかとか、どんな生き物がいるかとかを調べに来ているところだ。みんなそれぞれ好きなように周りを調べていて、僕は木からがさがさ音がするのに気づいて見上げて、それであれを見つけてしまったのだった。

 がさがさ、がさがさ、木の上から音がする。がさがさいう音の発生源では、木の枝と葉っぱががさがさ揺れていて、そこに、何か、毛の塊がいた。木にはぶどうをぎゅっと縮めたような実が生っていて、毛玉ががさがさ揺れる度に、ばらばらと実が落ちる。どうやら実を食べているようだ。

 木の上で小さな実を必死に食べている毛玉。もしこれが小さい動物だったら、きっと可愛かっただろうに。その毛玉を作っている毛は、どう見ても人の髪の毛のように思えた。

「あおくん、どうしたの?」

「ひゃあ!」

 後ろから声をかけられて、僕は飛び上がってしまう。

「あら、びっくりさせたね、ごめんね」

「よ、よし子さん」

 後ろから僕の様子を伺っていたのは、この辺りの山の持ち主で、クラブ活動の時にもついてきてくれて、色んなことを教えてくれるよし子さんだった。白髪交じりのおばあちゃんで、だけどいつも元気で優しい。僕たち皆大好きな人だ。

 その、よし子さんが、さっきまで僕の見ていた木を見上げて、まだそこにいた毛の塊を見つけて。

「あらまぁ」

 何だかのんびりとした口調で、そう言った。

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