窓から夕陽が差している。明日は辺境伯領へと出発する日だ。第一騎士団は少数精鋭、50人の竜騎士により構成されているが、今回の任務については他の騎士団は伴わず、第一騎士団のみにて遂行する。


 泣きそうな表情かおをしていたな……。


 第一騎士団の会議室を出て行く時、頭を下げたフィーナの口元が歪んでいた様に見えた。追おうとしたら、「来ないでください!」とピシャリと言われて、それ以上追いかける事が出来なかった。


 何がフィーナの気に触ったのかが分からない。

 気になって、仕事の合間に魔導省に足をむけたが、タイランの奴が会わせてくれなかった。



 「3日後に出発だって? お前さん達のお陰でこっちも準備で忙しいんですぅ 」


 「それは悪いと思っている。だが、なるべくはやく解決する様にとの陛下のご命令だ 」



 部屋を覗こうとするが、半開きのドアの前でタイランが悉く邪魔をする。邪魔だと睨むと奴は肩を竦めた。


 「会わせる訳にはいきまっせーん 」


 「何故だ?」


 「頼まれてるから 」


 「だから、何故だ? 」


 押し退けて部屋に入ろうとすると、「フィナフィナはお前の事を心配してるんだよ! 」と身体を張って止められた。


 「は? 何を心配することがある? たかが灰色狼グレイウルフ程度の討伐など…… 」


 「違うね。今度はフローズヴィトニルの率いる群れだと聞いたけど 」


 「変わりはしない 」


 うーんと、タイランは唸ると考え込んだように指の背を口元に当てる。


 「じゃあさ、これは? 『聖女』さん 」


 聖女? 


 それこそ訳が分からなくて、眉を顰めた俺に、「あーあ 」とタイランがため息をいた。


 「お前さー、あんなに研究にしか興味の無かった子に知らなかった感情を覚えさせたんだから、ちゃんと責任持てよなー」


 バンバンと背中を叩かれて、眼前でドアを閉められた。


 「おいっ、タイランっ! 」


 『分かんねぇなら考えろ。朴念仁が 』


 「……っ?! 」


 そこまで言われて、仕方なく引き下がるしか無かった。




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