④
「あれから、フィーナ様はここへいらっしゃいませんね 」
振り向くと、いつの間にかやって来たエリアーナが騎士団室に入ってくる所だった。フィーナとは反対に、エリアーナは毎日ここへと足を運んでくる。
「明日、ジークハルト様は辺境伯領へ向かうというのに、何を考えているのでしょう 」
「さぁな 」
タイランに言われて、あれからずっと考えているが、幾ら考えても分からないのだ。
それよりも、彼女は拗ねたまま、最後まで俺に会うつもりは無いのか。
考えながら外に視線を移すと、そそとエリアーナが側に寄って来る。
「本当にフィーナさんはジークハルト様のことを愛していらっしゃるのでしょうか?
ひたと身体を寄せ、するりと細い腕を絡みつかせてくる。
「……マリウス殿下に誤解されますよ 」
腕を離そうとすれば、きゅっと力を込められた。どういうつもりなのかとエリアーナを見ると、エリアーナはうるうるとした瞳でこちらを見つめてくる。
「やはり、そう思われていたのですね。マリウス殿下とは何もありません。私のお慕いしているのは…… 」
その時だった。バンと開いたドアの先に、瞳を見開いたフィーナが立っていた。
「フィ…… 」
「はぁ、こんな時に浮気なんてしてる場合ですか? 」
「え、あ……? 」
フィーナの視線の先には、俺の腕に絡みつかせたエリアーナの手があり、慌てて振り解く。
「フィーナ、違うぞ。俺は浮気なんて 」
「まったく、人が寝ないで作業していたのは誰の為だと…… 」
ブツブツと呟くフィーナの側に走り寄れば、フィーナが大きな瞳で、キッとこちらを睨み上げてくる。
4日ぶりのフィーナに、不謹慎にもジークハルトは怒った顔も可愛いななどと思っていた。
「そこに居る方といちゃいちゃしたいのであれば、私との婚約を破棄してからにしてください 」
そう言うと、フィーナは持って来た台車を重そうに部屋に押し入れる。乗せられている荷物の多さに、ジークハルトは驚いた。
「これは? 」
「
「どういうことだ?
魔法石は滅多に見つかるものではない。特に
驚いているジークハルトを見て、フィーナが箱から緑色に光る石を取り出す。それは紛れもなく、防御の魔法石に見えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます