一生を共に繰り返していたかった
「……ごめん……ごめん……」
届くわけもない謝罪を繰り返しながら。
「許して……」
許して貰えないはずの許しを乞いながら。
「……俺の、ため……だから……」
精神安定剤を欲しがりながら。
「……早く」
金属擦れる音を立てながら、コイツらとまたあの日々を過ごしたい。と、心で想う。
またあの日々を味わいたい、また自分を忘れたい、あの日々でしか自分を忘れれないんだ。自分を思い出させないでくれ。
早く、早く、あの日々になって欲しいから。
早く、
ガチャガチャと聞こえるその金属が擦れる音は俺を目覚ますわけもなく、俺はただ、何も見えない盲目の中、目の前のロボット達の故障を直していく。
早く、早くしないと思い出してしまう。
「まだか、まだか……まだなのか……っ!?」
ドライバーがネジに上手くハマらない。
焦っているのか? いやそのはずはない、こいつらはまた話してくれるという確証がある、コイツらはロボットだ。消えたりなんかはしない。だから焦るなんてそんなはずがない。
あぁ早くしないと、早く、俺の精神が狂う前に早く。
「あれ、あのネジはっ!?」
しまった、ネジを失くした。
どうしよう、直せない、嫌だ、また独りなんてそんなのは嫌だ、絶対に、早くネジを、早く。
「っあった!! これで……!!」
大丈夫、大丈夫、コイツらはロボットだから、ちゃんと直せば動くから。
「早くっ早くっ!!!!」
クソ、汗が、精密機械だから濡らしてはダメなのに。
「だ、ダメだ、濡らしたらダメだっ!!また独りになる、そんなのは嫌だ!!」
嫌だ、嫌だ、早く、早くしないと……。
「あとは蓋っ!! 蓋をするだけ!! ネジっ!! 蓋っ!! ドライバー!!」
手が震える。
ああくそ、早くしないとなのに。
「早く、早くしないとっ!!」
息が詰まる感覚がする。
気持ち悪い、でも話せたらきっと治る、だから早く、早く……。
「ハマった、あとはネジとドライバーと……!!」
ガチャガチャと金属の擦れる音。
少し手にあたる、ドライバーの先が痛いが気にしない。それより早くしなければ。
「っできた!!スイッチを、スイッチを!!」
カチ、と背中にあるスイッチを俺は押した。
よし、これなら話せる……。
ーーーー震える手でスイッチを押して数分。
ロボットは動きそうにない。
「おかしい、いつも通りに治した……だから動くはず……なのになんでだ、動かない……」
じっと見てもソイツは動く気配がなくて。
ガンガンと、昔のテレビみたく叩きながら声をかけてみるがそれも反応無し。
「なんっで動かない!? 何も間違っていないはず!! なのになんで!?」
声を荒らげてみるが、それも反応は無い。
起動音すらも聞こえないロボット。
俺は回っているようで回っていない頭で考えるも、何も思いつかない。
「くそっくそっ!! なんでなんだっ!!」
やけ酒をしたおじさんのように、ロボットを蹴ったり殴ったりしながら声を荒らげる。
それでもロボットは動かない。
「あぁくそっ!!!! お前らなら俺を置いていかないと思ったのに!! くそっ!!くそっ!!」
床を叩いたり、壁を叩いたり、机を蹴ったり、花瓶を割ったりと俺は満足のいくまでひたすらに暴れた。
ーーーーあれから沢山暴れたため、疲れて寝転んでしまった。
「はぁっ……はぁっ……なにか、しねる、方法は……ない、のか……」
息をしながらの死ねる方法を探すという皮肉な事をしていると、身体が限界を迎えたのか、脳が限界を迎えたのか。頭の中に突然、「ロボットで自身を殴れば」というのが過ぎった。
「……あぁ、それだ……」
そう呟いて、俺はすぐさま行動に出る。
倒れ、傷だらけのロボットを手にしてはひたすらに自分を殴った。
「……」
頭を数十発、胴体を数十発、足を数十発。どこそこ構わずランダムに殴る。
それでも死にはしないから、ロボットの手を首絞めの手に、腕を立ててその手に自身の首を乗っける。
それも苦しいだけで、意識は飛ばない。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
全身がじんじんとして呼吸が苦しくて。
「あぁ……もう、どうやったら俺は……しぬ……?」
絶望のどん底に落とされた俺は、ただリビングの床に蹲りながら静かに嘆くことしかできない。
「助けて……誰か……俺を殺して……」
震える声でそう言っても、誰も返事はしない。
いつもならしてきたのに。
このロボットを拾わなければこうはならなかったのか、なんて考えるも結局は俺は不死身だから。という理由で片付ける。
「……疲れた…………、どうせ誰も来ないし…………もう寝よ……」
そして俺は浅い眠りにつくーーーー。
詩、短編小説集 こぼりび @Koboribi
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