詩、短編小説集

こぼりび

気づけば。

「んーっと……ここは……」

 学校から帰ってすぐ、課題をやっていると突然にスマホがピロンと鳴り出した。

 あれ、おかしいな。まだクラスの人と交換してないはず……。


 高校に入学してまだ間もないため、クラスの人とメールの交換をしていない。じゃあ誰なんだ……? と、薄っぺらな疑問を抱きつつ、俺はいつも通りにスマホを見て、通知を確認する。するとメッセージの送り主は中学校時代にできたが行く高校が別れたため、中学卒業後からしばらく会っても話してもいない親友からだった。

 メッセージの内容は俺の高校での生活を軽く心配しているような内容だった。


 そんなメッセージに、変わってないなとほっこりした笑みを零しながら、俺は元親友のメッセージに返信をした。


「おー、元気元気。上手くやってるよ。お前は? 上手くやってる?」


 返信をすると、すぐメッセージに「既読」という文字が付いた。


「既読早……」


 変わらないな、とクスクス笑っているとピコンと白色のメッセージが画面に現れた。元親友からの返信だ。


「良かったわー! こっちも元気でやってるぜ!」

 相変わらず、文面でもうるさいな。と思いながら更なる返信を元親友にする。


「良かった。てか、高校で友達ってできた? 俺はまだなんだよなぁ」

 まあ、あいつなら出来てるだろう。その気持ちで質問した。すると、俺の思っていた事の真反対の返信をあいつはしてきた。


「同じ!! 俺もまだできてないんだよな〜! いやー、俺らってやっぱり似てるわ」


「……えっ」


 予想外すぎて、思わず声に出してしまった。

 元親友は昔からコミュ力が高いうえ、好かれる性格をしていた。だからてっきり友達はできてるのかと思いきやできてないようで、目が点になるほど驚いた。

 「え、ほんと?」と、驚いたとでも分かるような短文を元親友に送る。


「ほんとに決まってるだろって。嘘つくメリット俺にあると思うかー?」


 確かに、メリットはないな……。まあ、なんかあったんだろう……。

 そう思い、元親友の意見を肯定するような返信を俺はする。


「確かに。メリットなんてないね」

「だろー? まあ、それにしても元気そうでよかったわ。安心」

「そっちもな。元気そうでよかった」

「んじゃあ……もう話せないけど、またな」

「話せないってなんだよ、いつでも話せるだろ」

 元親友の、おかしな返信の文面にツッコミを入れながらクスッと笑みを零す。

 けどもう俺の笑みは、しばらく見られないことが次の元親友の返信で分かる。


「……あー、忘れた? 俺が『死んでた』ってこと」


 その返信を見た途端、白い吹き出しのメッセージは画面から消え去ったーー。

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