第4話

 「今頃気づいたのか?」

篤はからかうように笑った

「あっくんは最初から私だって気づいていたの?」

「うん。だってそのホクロ」

由香は右のほほに手を当てた

「そのハートの形のほくろがある人なんて珍しいからな」

「でも、それなら昨日の体験教室で名前を呼んでくれても良かったのに」

由香は不満そうに口を尖らせた

「仕事中に友達モードになるわけにはいかないだろ」

「あっ、そっか」

「久しぶりに赤帽子に会えてうれしいよ」

「まだその呼び方なんだね」

 あれは由香が小学生高学年だった頃。

由香と篤の通っていた学校では体育の授業の時に

高学年は緑の帽子を被る決まりがあった。だが由香はその日、間違えて低学年が被る赤の帽子を被っていた。以来、由香は篤に時々、赤帽子と呼ばれている。

「あっくんはもう就職しているの?」

「いや、夏休みだから親の店を手伝っているだけ」

「そうなんだ」

「今度この島で行われる夏祭りがあるんだ。その出店で使う貝殻を海に取りに行くんだけど、由香も一緒に行くか?」

「行ってみたい」 

「よし、じゃあ待ち合わせ場所と時間はー」

こうして私はあっくんと貝殻拾いを行うことになった


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