第22話 表裏

「...あのー、すみませんー。よろしいですかー?」という声が聞こえて思わず振り返ると、そこには見知らぬ若い女性が立っていた。


「...あ、す、すみません」と、すぐにおじいちゃんから離れて接客をする。


「いやー、なかなかいい老舗のお店ですねー」と、店内をうろうろする女性。


「そ、そうですね...」


「創業何年ですか?」


「100年じゃよ」


「...100年...ふぇー、それはそれは長いですねー。でも、こんな老舗のお店に若い店員さんがいるなんて驚きました。もしかしてお孫さんとか?」


「...いや、違いますよ」


 すると、その人は私に近づいてこう言った。


「あなたとはすごく気が合いそうだなー。ね?名前を教えてよ」


「...菅原...玲です」


「...菅原玲。うん、いい名前だね!覚えたよ!」


「お客様は...なんていうお名前なんですか?」


「私?私はねー、うん。そうだなー...。あだ名で呼んで欲しいんだよね!」


「...あだ名ですか?」


「そう!私のことはクイーンって呼んで!」


 彼女はそう笑いながら言い放ち、去っていくのであった。


 それからいつものように深山おじいちゃんとこでアルバイトを終えて、帰宅するのだった。



 ◇


「ただいまー」


「お帰りなさい」と、いつも通りおかえりのキスをする。


 そうして、今日あったことを話す。

アルバイトを続けること、そして少し変わったお客さんが来たこと。


「...クイーン?何それ?」


「いや、私もよくわからないんですけど...」


「ふーん。...クイーン...ね」


「何かありましたか?」


「あぁ...いや...なんでもない。気のせいだと思う」


「??」



 ◇


「...あはは、みーつけちゃった。さーて、どうしよーっかなー」と、舌なめずりしながらスマホを眺める。


 警察に突き出すこともできれば、両親に売ることもできる。

反対に彼女を完全に匿うことも、その上彼女があった被害について全てを明かすこともできる。


 つまり、全ては私の心の行き方次第。

一人女の子の命を握っていると考えるとそれはそれで興奮しちゃうなぁ。


 あぁ、本当にこの仕事が向いている。

これこそ私の天職!!


「...こういう時はいつだって私はこいつを信じてきた」と、ポケットの中からコインを取り出す。


 そうして、親指にコインを乗せて綺麗な回転をしながら見事に手の甲に載る。


 さて、吉と出るか凶とでるか...。


 手を開けるとそこには...。


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