第21話 吐露します

 まさか弁護士が動いてるとは...。


 玲ちゃんには大丈夫だよと言ったものの、内心は結構焦っていた。


 しかし、警察ではなく探偵を使っているということは、こちらもいざとならば警察に駆け込む...のもありだよな。


 そういう証拠とかもなるべく抑えて...って、玲ちゃんの裸の写真を撮るわけにはいかないしな...。


 ひとまず、携帯でいろいろ調べてみる。

DVの立証方法とか、対処方法とか、そういうのを見ている間にだんだん眠くなってきてしまうのだった。



 ◇深山商店


 いつもより少し早めに向かう。

本当なら電話で連絡した方が安全なのだが、今までお世話になったことを含めて、そんな不義理なことはできないと、直接謝罪しに向かっていたのであった。


「...ふぅ」


 きっと、深山おじいちゃんは悲しい顔をするだろうな。そうと分かっていても私のせいで迷惑をかけることはできない、とお店に入ると「おっ、玲ちゃん、今日は一段と早いねぇ」と優しい笑顔で告げられる。


「...あの...今日はその...」


「ん?」


「...お仕事を辞めたくて...その...」


「...おー...急にどうしたの?とりあえず、こっちきて話しよう」


「...はい」


 理由はあまり考えていなかったが、体調不良という体にすることにしていた。


「...体の具合が悪いのかい?そっかそっか。それは仕方ないけど...別にやめなくてもいいんじゃないか?」


「...えっと、それは...」


「...他に辞めたい理由があるんじゃないか?無理に話せとは言わないけど...玲ちゃんとはせっかく仲良くなれたし、常連さんからも人気だしさ...。もちろん、本当はここが嫌だったっていうなら「そ、そんなことないです!...みなさん優しいですし、深山おじいちゃんも...本当に私のおじいちゃんみたいっていうか...。おじいちゃんが居たらこんな感じなのかなって...」


 すると、優しく私の手を握ってくれる。


「...わしもねー、孫がいたんじゃよ」


「...」


「まだ小学生だったんだけどねー。大人しくて可愛い女の子だったんじゃよ。けど、交通事故でな...。その話聞いた時、すごく胸が痛くなってな...。その命日に...玲ちゃんがやってきたんじゃ。そう思いたかっただけなのかもしれない。けど、すごく似てるんじゃよ。孫と...。もし、元気だったらこんなふうに大きくなって...こんな風に楽しく話せて...なんで、なんでおいぼれのワシじゃなくて...この子がってな...去年妻も亡くなって...ワシにはもう...何もないのじゃ...」と、強く手を握りしめる。


「...おじいちゃん」


「...じゃから...正直に話してほしい。...ワシに協力できることなら何でもする。もうあんな思いをするのはごめんなんじゃ...。もう...寂しい思いはしたくないのじゃ」


「...あのね」


 そうして、私はこれまでの経緯について全てを話した。

家族からのDVについて、今は家出をして匿ってもらっていること、そして現在探偵に探されていること...だから迷惑をかけないためにやめようと思っていること。


 その事情に更に涙を浮かべるおじいちゃん。


「...だから、これ以上迷惑をかけたくなくて...「もういい...もう何も言わなくていい...」と、優しく抱きしめられる。


「...辛かったろう...もういいんじゃよ...」


「...はい」


 そんな暖かい言葉と体温を感じながら、もし本当に私に優しい家族がいたならこんな感じなのかなと思いながら泣くのであった。

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