第20話 無理な笑顔
瀬奈ちゃんと別れた後、私はすぐに家に帰った。
そして、スーパーの袋を片手に思わずしゃがみこんでしまった。
怖い...ただ怖かった...。
私にあんなことをしておいて...探しているという事実がただただ怖かったのだ。
...いらない子ではなく...サンドバックとして存在する...。
ううん...サンドバックとしての存在価値を私に求めていることが怖すぎた。
「...うっ!」と、トラウマから一気に思い出したくない記憶が湯水のように体に入ってくる。
そのまま、荷物をその場において洗面台に駆け込む...。
吐きそうだけど...吐けない...。そんな時間が30分ほど続いてようやく少し落ち着きを取り戻す...。
ここ最近は少しだけ肉が付き始めたはずの私の顔は...鏡を見るとまるで昔のようにやせ細った姿に見えた気がした。
そのまま、倒れるようにソファに向かい...気づくと眠っていた。
◇
お味噌汁のにおいで目を覚ます。
「...」と、目を開けるとそこには圭さんの姿があった。
ゆっくり体を起こすと私の体には布団が掛けられていた。
「...あっ、起きた?」
「...あっ、ごめんなさい!」と、慌てて起きようとするがうまく体が動かない。
「ちょ!?だ、大丈夫...!?」
そのまま、私に駆け寄ってくれる圭さん...。
いわないと...探偵に調べられていること...。
「...ごめんなさい...話が合って...」
「とりあえず...横になろう?ね?」と、言われるがままもう一度ソファに横になる。
すると、暖かいココアを持ってきてくれる圭さん。
「どうぞ。飲めそう?」
「...はい」
「ご飯は食べられそう?一応...玄関に置かれてた食材で適当に作ったんだけど...」
「...大丈夫です...。すみません...迷惑かけて...」
「迷惑なんてそんなそんな...」
玄関にスーパーの袋が置かれてソファで眠っていた私...。
何かがあったことは察しているはずなのに、無理に聞いてこない圭さん...。
本当...優しいな。
そうして、ココアを少し飲んで気持ちを落ち着かせながら話を始める。
「あの...今日...スーパーで大学のゼミが同じだった人にあって...」
「...うん」
「それで...その...数日前に大学の中で私を探している人を見かけたらしくて...」
「もしかして...親?」
「違うんです...」と、私は財布からもらった名刺を渡す。
「...王探偵事務所...」
「...はい。どうやら...親は探偵を使って探しているみたいで...。多分、警察は私が以前駆け込んだこともあるから...そういうところを含めて...探偵に依頼していると思うんです」
「...なるほど」
「...これ以上...迷惑をかけたくないので...その...やっぱり私は「何言ってんの?玲ちゃんは俺の彼女なんだよ。彼女を...毒親に引き渡すわけないでしょ」
「で、でも...「でもじゃない。俺が何とかするから。変な心配はしなくていいよ」
「...ありがとう...ございます」
本当はそういってほしいと思っていたが、もし見捨てられたらと考えてしまっていた自分が情けなくなる。
「けど...探偵か...。とりあえず、この探偵事務所について調べてみるね」
「...アルバイト...どうしたらいいですかね」
「...うーん...辞めたほうがいいかもね。...折角、始めたバイトだからやめるのはあれかもだけど...」
「いえ。深山おじいちゃんにも...迷惑かけたくないので...やめます」
「うん。そのほうがいいかも。なるべく外出も避けて...何かあれば俺が買いに行くからさ」
「...はい。すみません...」と、頭を下げると優しくなでてくれる。
「いいっての!そんな顔しないで?俺は笑ってる玲ちゃんが好きなんだから!」
「...はい」と、私は両頬を指で無理やり上げてそう言った。
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