第18話 明らかにやばい親
「それで...娘の情報は集まりましたか?あっ、これケーキです。よかったらお食べください」
「えっ!?ケーキ!?やったー!ありがとうございます!」と、喜ぶ阿呆な助手。
そして、その勢いでカバンに足を引っかけて盛大に転ぶ。
「いってーーーー!!あ、す、すみません!」と、すぐに鞄をもとに戻す。
「大丈夫ですか?よかったらどうぞ、食べてください。ここのお店はとても人気でね。自分たちの分も買ってきてしまいました。どうぞ?」
「...後でいただきます」と、助手を目で制す。
「そうですか?では私はいただきますね...」と、ケーキにフォークを刺す。
「...現時点でご報告できる情報はありません。ご期待に沿えず大変申し訳ございません」
「そうですか、そうですか。いえいえ、別に今日までという期限があったわけでもないですし、じっくりと探していただければそれでいいです。あっ...そういえば最近、うちの家にネズミが侵入しましてね...」と、もう一度ケーキにフォークを指す。
「...いやぁ...本当に...めんどうですよね。駆除って...。どうして彼らは勝手に家に入ってきたり...家の周りをちょろちょろとするんでしょうね...。そのせいでこっちも無駄な出費が嵩んだり...本当大変ですよ」と、がっと強くケーキに突き刺す。
「...おすすめの駆除業者がいたら教えていただけますか?」
「...すみませんが、知り合いにはいないので...。お力になれず大変申し訳ございません」
「...そうですか。いえいえ。それではまた...」
「...はい。何かあればご報告いたします」
「はい、待っていますね」と、笑顔を浮かべながら去っていくのだった。
「あっ、王子~、このケーキ食べていいですか?」と、言われたが俺はそのケーキをそのままゴミ箱にブチ込む。
「ちょ!?何してるんですか!?」
「...おい、助手...」
「あぁ~...なんですかぁ...?」
「...この依頼...やめたほうがいいかもな」
「なんでですかぁ?」
「...おい...気づかなかったのか...ずっと笑顔だったんだぞ...娘がいなくなったっていうのに...。何も情報が進展していないのに...。それにまるで見計らったように俺たち二人がいるときに来るなんて...」
「かんがえすぎじゃないっすか?」
「...お前が能天気すぎるんだよ...。一体...何がどうなって...誰がかかわってるんだ...」
「んじゃ、やめるんですか?この依頼」
「...いや...だからお前に聞こうと思ったんだよ。もし、このまま色々調べたら消されるかもしれないぞ」
「...まじっすか?それはやべーですね。うーん...でも個人的にはやりたいなーって思います!ほら、なんか消化不良っていうか...?」
「...はぁ...そうか...わかった...ちょっと色々考えるから今日はもう上がっていいぞ」
「え!?いいですか!?らっきー!!!」と、速攻でカバンを持って帰る。
◇
『どうします?あの探偵事務所...消します?』
『いや、一旦このまま様子を見よう。ただの個人の探偵事務所...つぶそうと思えばいつでも潰せるしな。まぁ、これ以上嗅ぎまわるようなら潰すだけだ』
『けど、あれは一体どこにいったんでしょうね。あれに居場所なんてないはずなのに。友達も恋人も信頼できる大人もいないはずなのに...』
『さぁな...。もしかしたら体を売って転々としているのかもな。しかし、痕跡を一つも残さないなんて不可能だ。この監視社会の世の中...人々の目そのものがSNSのおかげで監視カメラの役割を果たしてくれるからな...。あぁ...早く殴りたいなぁ...。もし...見つけたら手足を拘束して...二度と逃げられないように足を折って...GPSでも埋め込むか』
『それはいい考えね』
そんな声をイヤホンで聴きながら私はケーキにフォークを突き刺す。
「...あは」
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