第15話 人の恨みも七十五日
部長と本庄が面会に来るらしい。
多分、本庄のやつは無理やり連れてこられるだけなのだろう。
まぁ、もうどうでもいいが。
どうせ長くはないのだから。
そうして、12時になると扉をノックされる。
コンコン
「...どうぞ」
「...失礼します」と、入ってきたのは部長ではなく、本庄と...見知らぬ若い女の子だった。
「...」と、思わず黙り込んでしまう俺。
「お久しぶりです。先輩」
「...部長は?」
「奥さんが体調不良なので今日は来れないです」
「...それで?その子はなんなんだ」
「...俺の彼女です」
「...っぷwなんだなんだ?新しい女ができたから、もう俺は大丈夫ですって見せつけにきたのか?」
「...まぁ、そんなところです」
「はっwお前もとことんくだらねぇやつだな。あー、お前見てると元気出てくるわ。お前みたいなポンコツでも俺がいなくなりゃ、会社で多少は求められたりするもんだろうなw」
すると、隣にいた女の子がじっとを俺を睨む。
「てか、その子いくつだ?ずいぶん歳が離れているみたいだけど、まともな出会い方ではねーよな?そもそも、俺の女と別れてまだそんな日が経ってもいねーのにすぐ違う女に手を出すとかwお前ってそんなにモテたんだっけか?」
「...いつもにましてよく喋りますね。もしかして、久々に人と話せてテンション上がっちゃってるんですか?」
「...ぁぁ?」
そう呟きながら果物をテーブルに置く。
「お前がくれたもんなんか食わねーぞ」
「別に毒なんて入ってませんよ。安心してください。そんなことしなくても先輩は死ぬんでしょうから」
「...てめぇ、さっきから誰に口聞いてるんだ?...ごほっごほっ...!」
「無理しない方がいいですよ。少ない寿命がさらに縮みますよ。それに俺の女なんて言ってる割に、お見舞いにはきてないですよね」
「あ?なんでお前がそれを...」
「あれ?図星でした?いえ、花に水が入っていないから恐らくほとんどお見舞いには来ていないんだろうなと思ったんですが...。もしかして、捨てられちゃいました?w」
「...調子に乗ってんじゃねーぞ」
「質問の答えになってないですよ。まぁ、これでお互い同じ女に捨てられたもの同士、仲良くできるかもしれませんね」
「...お前と仲良くなんかできるわけないだろ」
「でしょうね。俺も絶対に遠慮したいですね」
「...さっさと帰れよ。用事はすんだろ」
「いやいや、ほら、先輩は俺を見てたらイライラして早く死んでくれるかなって思ったんで。しばらくは居ようかなと」
その瞬間、俺はテーブルに置いてあったリモコンをもって、思いっきり本庄に向かって投げる。
肩にあたるがまるで動じる様子がない。
すると、あの彼女らしき人が本庄を守るように立ちふさがる。
「...そういうのやめてください...」
「...弱いものをいじめるってこういう感覚なんですかね。まぁ、俺の場合は反抗すらできなかったわけですけど。こんなことして何が楽しいのか理解できないですね」
「...あ?」
「もう少しすっきりするかなと思ったんですけどね」
お前が...そんな顔で俺を見てんじゃねーよ...。
お前は...俺のことを死ぬほど恨んでるはずだろうが...。
そんなかわいそうなものを見るような目でさげすんでじゃねーよ。
「それじゃあ、先輩。お元気で」と言い残して病室を出ていくのだった。
◇
さっきのは本音だった。
ほら、よくテレビでも嫌な奴に仕返しをしたりする番組があるくらいだし、そういうことをすればすっきりすると思ったんだけどな。
「...大丈夫ですか...?」
「...あぁ、うん。...ごめんね。やっぱり連れてくるべきじゃなかったかな」
「...いいえ。私は...来てよかったって...思ってます」
「...そうなの?」
「はい...」
「そっか...。家に帰ったら...その...」
「分かってますよ?...イチャイチャしたいんですよね?」と、楽しそうに笑うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。