第10話 早く会いたい
あの状態の玲ちゃんを置いていくことに抵抗はあった。
しかし、会社に連れて行くわけにもいかず...。
正直休もうかと思ったが、「私は大丈夫です」なんて、無理な笑顔でそういった。
...なんで納得しちゃったんだろう。
何度も家に戻ろうかと思いながら会社に到着してしまった。
やっぱり今日は早退しようかな...。
そんなことを思いながら会社の中を歩く。
「はぁ...」
そうして、いつも通り朝礼が始まるが...。そこにはあいつの姿はなかった。
どうやら話によると体調不良とのことだった。
心の中でガッツポーズする。
これなら早退しやすいし、それにあいつが苦しんでいる姿を想像して嬉しくて堪らない。
そのまま昼まで仕事をして、適当な理由をつけて早退することにした。
『家にいる?大丈夫?』PM1:30
『会いたいです』PM1:31
『今すぐ帰る』PM1:31
それから『冗談です!元気ですよ?』とか、『私なら大丈夫です!』とそんなカラ元気な連絡が来て余計に心配になる。
そうして、駅に到着してからも走って家に向かうのだった。
◇
「はっ...はあっ...」
急いで家に帰ると、そこにはソファの上で膝を抱えながら泣いている玲ちゃんの姿があった。
「...なんで...」と、俺の姿を見て言葉を失っているようだった。
「...俺は...玲ちゃんの彼氏だから」
その瞬間、わんわんと子供のように一心不乱に泣いてしまう玲ちゃんを強く抱きしめる。
本当...あんな状態の玲ちゃんを置いて行ったくせによくもこんなこと言えるなと自分にあきれてしまう。
「...ごめん。もう二度と...離さないから...」と、更に強く抱きしめる。
それからひとしきり泣いた玲ちゃんは、「もう大丈夫...です」と優しく笑う。
「...うん。けど、今日はずっと一緒にいよう」と、手をつなぐと顔を赤く染める。
「...はい//」
それからはなんとなくテレビを見て笑って、携帯アプリのクイズゲームで戦ったり、一緒に夜ご飯を作ったりと、そうしてイチャイチャしながら過ごした。
そうして、一緒に布団に入る。
「私...今、すごく幸せです」
「...俺もだよ。幸せ...」
「ふふ、うれしいです。これからも先も...迷惑かけたり...面倒なこと言ったり...そういうことしちゃうかもです...。けど...それでも...好きでいてくれたら...うれしいです」
「...うん。俺もだよ」と、キスをする。
「ちゅ」「ちゅ」
「...大好き...です」
「俺もだよ」
そうして、また強く抱きしめあう。
「...あの...キス以外のことも...いつか...したいです」
「...うん」
「...決めませんか?」
「決める?」
「はい...。初めての日...。そうしたら...ほら...なんか...楽しみができるというか...。でも...こういうのはまだ早いですかね...?平均的にどの程度なんでしょうか...するのって」
「...2か月くらい...とかかな?」
「それはちょっと...長いです。私は...もう少し早めにしたいです...」
「じゃあ...1か月とか?」
「...はい。わかりました...。それまでに...バイトを始めて...どうにか大学を辞められるように...したいです」
「そうだね」
「はい」
そうして、目をつむったのだった。
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