いま、何が残っているか

@ioaoui

僕は、わかっていないらしい

大学生の土曜日ほど無価値な日はないと思う。何故なら、今、私はなんの予定もなく、好きな音楽を聴きながらダラダラと友人の家で過ごしている。友人は随分と夜更かししていたのでまだ寝ている九時四十分。スヤスヤと寝息が聞こえてくる。


最近気持ちがふわふわしている。病んでいる、という言葉では片付けたくはないが、似た種類のものだとは感じる。他人に言語化して分かりやすく伝えることが出来ない、漠然とした、生産性のない悩み。堪らなく嫌いだ。原因はハッキリしている。高校時代、仲良かった友人の事を思い出しては、忘れようとして、また思い出しては忘れようとする。これを二年近く繰り返している。いわゆる「カワイソウな奴」なのだ。


この友人は高校時代に根暗な私にも優しくしてくれ、皆に人気者の素敵な友人であった。しかし、事件が起こった。私は当時、相当なひねくれ者であったようで、向こうが友好的な態度を見せてくれても心の底では信じきれていなかった。ある日、通話中に友人が悩み相談をしてきた。

「これから人生やりたい事とかなんも無いな。大学入って、卒業して、その後生きてるのかもわからないよねー。君はなんかやりたい事とかある?」

この日、今思えば友人はいつもより言葉に生気がなかった気がする。しかし僕は、

「君にないなら僕にあるわけないだろう。」

と少し冷たく返した後に、

「僕にこんな事話してて時間無駄じゃない?君は人気者なんだから他の人に話してみたら?そっちの方がいいと思うよ。」

と、言った。私は友人が「なんでそんな事言うのー?」と笑って返すだろうと予想していた。結果、少しの沈黙の後に電話を切られてしまった。友人は良くも悪くも素直な人であった。私は「私と君とでは釣り合わないくらいもったいないお話だから、君と釣り合う人と話をした方がいい!」という考えのもとこの発言をしたのだが、どうやら友人は自分が拒絶されたと感じたらしい。これがさっき述べた事件であり、ここから連絡を取る頻度は減っていき、見事にゼロになる。

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