第2話
次に目を覚ましたのは雨も上がり、空が茜色に染まり始める頃。あんなに力を得たいと思っていたのにも関わらず、こんな時間まで寝てしまった。いくら寝起きで機嫌が悪かったとはいえ、二度寝はよくなかった。せめて目覚ましをセットしてから寝るんだった。
と、自分を責めるのはそこまでにして、日も暮れようとしているが成人式用にと仕立てたスーツに着替える。
今の慣習では、力を得てそのままダンジョンに行く人が大半だ。だからスーツや晴れ着に身を包んで来る人は少なく、ほとんどの人が戦闘用の装備に身につけてくる。
俺もそうしたいのは山々だが、一応儀式的な側面を持つものだから服装には気をつけようと思っている。まあ、建前はそうだが本音ではスーツが着たかった。
スーツを着る文化はだいぶ前に廃れてしまった。いつ非常事態が起きるかもわからないのに防御力に優れた服を着させないのは何事だー!と訴えた馬鹿のおかげで成人前の子供は式典では新たに開発された防護スーツを身に付けさせるのが礼儀となった。主張は理解できるがスーツを着たかった系男子の俺は、毎年成人式の映像を見る度にその活動家を恨んだ。かなり昔に亡くなっているので、死後の生活に影響が出てるかもしれない。きっとそうだ。
とまあ、ベラベラと喋ったがスーツを着用した。赤のネクタイと白のワイシャツを除けば他は真っ黒の位で立ち。購入後に何度も家で着てみてはいたものの、成人式のある日にこの姿になれたというのは感慨深い。
さて、力を確認しよう。確認、とはいったもののすることはただ祈るだけ。力を授かるにはダンジョンに挑むという意志を持って手を組む。そうすれば不思議とどんな力が与えられ、どう使えばいいのかがわかる。
とりあえず手を組んで、目を瞑る。挑む意志、だなんて言ってはいるが散歩しに行ってみたいとか巫山戯た考えでも力は与えられるらしい。中には意志の強さが力の強さを呼ぶと言う人がいる。信じるに足らない噂だが、念の為思いつく中で一番強く見える意志を示す。
(この世界からダンジョンをなくす。そのために必要な力をください。)
ダンジョンが発生した当初ならともかく、産業として成り立っている現代においてダンジョンを消滅させることを考える者はいない。そう予想した。
徐々に体が熱くなってくる。祈りのために組んだ手から一際強い熱が現れ、手、肘、肩、首と頭に迫ってくる。熱は段々とその温度を上げてきている。触ったことはないがマグマでもこれほど熱くはないだろう。不思議とこの熱に耐えられている。首に達した熱は脊椎を経由し、脳のある頭頂部にまで至る。
『イツワリ』
これが俺の力の.....
漸く力を手に入れたと思ったその時、到達した熱が身体中に巡り出し、痛みに耐えられず俺は気を失った。
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