ラノベ王の冠

ハカドルサボル

第1話 プロローグ

 高校の図書室には王がいる。


 図書室の女王こと、金閣寺雪(きんかくじ・ゆき)は蔵書三千冊を読破した読書狂(ビブリオフィリア)。


 彼女となら目指せると思った。ラノベ王に。


「僕と一緒にラノベ王にならないか?」


 葉隠入間(はがくれ・いるま)は勧誘する。


 彼は父にラノベ作家を持ち、母にラノベ作家を持ち、姉にラノベ作家を持った生粋のラノベ一家。もちろん全員一巻で打ち切られ、家族はバラバラ。一億円の借金が残った。


 ラノベ王になれば、年収一億円も夢ではない。一撃で借金を返すことができる。


「僕が編集者でお前がラノベ作家だ」


 葉隠入間(はがくれ・いるま)は、金閣寺雪(きんかくじ・ゆき)を欲する。


 彼女の圧倒的な読書遍歴をこよなく愛し、ラノベ一家の読む専門として、入間は雪の才能の片りんを感じ取った。雪はラノベ王になれる逸材。


 返答は、


「嫌。興味ない」


 と図書室で読んでいた本を閉じ、立ち上がって金閣寺雪(きんかくじ・ゆき)は逃げていく。


「……」


 入間は右手を肩まであげて追うポーズのまま固まる。そのまま雪を追いかけようとしてやめた。ストーカーになる必要はない。


 だって彼女はまた図書室に来るのだから。


 図書室の女王こと、金閣寺雪(きんかくじ・ゆき)はグレーゾーンの不登校だった。

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