第50話 ギルマス参上!



商業ギルド受付から奥にあるテーブルに1人残されたボクことアスランだが…


バタバタとイリーナさんが戻ってきて応接室に移動するように頭を下げてくる。

どうやらイリーナさんだけではチョコの買い取り値段を決めることが出来ないので決定権のある人と面談して欲しいとのこと。


おいおい、これはギルマス登場ってことぉ!?


商業ギルドのギルドマスターか…

片眼鏡のインテリおぢさんに言葉巧みに値切られたり?

それともベタに関西弁ちっくな喋り方で手揉みしながら商談で、

でんがなまんがなパターンか!?


応接室で待機しているとノックのあとイリーナさんを先頭に入室。


「お待たせしました、こちら当ギルドのギルドマスターです。」


「お・ま・た♪ギルドマスターの夕霧や。よろしゅうな♪」


なぁぁぁんだよぉもぉ!!!!

お姉さんキャラはお腹イパーイだよ!

もっとこう淡々と理詰めしてくるインテリ兄さんとか期待しちゃったじゃないか!

そんで後々協力体制になってお互いウィンウィンとかさぁ!


「あらぁ、想像と違った?」


出てきたのはおそらく狐系の獣人で

これまたベタな関西弁である。


「いえ、そんなことは…」


ガッカリさせた責任取って!

ちゃんと責任を取って!!

お詫びにそのふっさふさの尻尾をモフらせて!!


「それで?買い取りして欲しい言うてる商品見せて?それと尻尾は特別な人やないと触らせへんよ?」


なぜバレた?


「フフフ、それだけ尻尾ガン見されたらなぁ。あ、耳もあかんよ?」


まだ何もいってませんが!?

ま、まぁたしかに?ネコさん達の耳と尻尾は触りましたが?

それはもうツルスベのビロードのような触り心地で満足しましたが?

2人とも短毛だったから長毛も触りたいとか思いましたが何か?


「で、ではこちらを。」


「まぁ、綺麗なお菓子やねぇ。味見しても?」


「試食用は先程イリーナさんが食べてしまいましたが…」


「は?」


イリーナさんがビクッと身体を硬直させた。


「イリーナ?見ただけで値段がつけれると思ってんの?」


「い、いえ」


いや、そんなこっちに助けを求めるような視線向けられても…


「ハァ…しょうがないですね、次の街の分を1つ出しましょう。」


マジックバッグから1つ取り出して夕霧さんの前に置いてみる。


「あんた、助かったな?」


「は、はいぃぃ!アスラン様有り難う御座いますぅぅぅ!!」


んむ、半泣きである。


「では、遠慮なく。」


夕霧さんはパクッと一口で食べたりはせずに半分だけ齧るように口に含んだ。


香り・クチドケ・食感・後味を確認してさらにもう一口。


「アスラン様、在庫はあるん?」


「数はそんなに無いですがありますよ」


「全部買い取らせてくれへんやろか?」


「他の街の分も、ということですか?」


「そうや、あるだけ全部や。一箱につき金貨3枚でどうや?」


ちなみにメイザルグ領の領民が一月にかかる生活費の平均は1人銀貨30枚程度。

銀貨が100枚で金貨1枚。

金貨なんて普通の領民は持っていない。


かなり高額だな。

きっと嗜好品を買い取ってくれるいい客がいるんだろう。


しかし

「それでは、このお話は無かったという事で。失礼します。」


「ちょ、ちょっと待ちぃな!冗談やんかぁ、もう!せっかちな人やなぁ」


「冗談でしたか、このギルドには目利きのできる人が居ないのかと早とちりしてしまいました。ハハハ」


「じゃ、じゃあ金貨8枚でどうや?」


「このお菓子はとある国の王族でも滅多に手に入らない云わば幻のお菓子なんですが…」


「その幻をなんでアスラン様が持ってるん?」


「商品の仕入れルートは商人の命です。それを話すとでも?」


「チッ」と舌打ちする夕霧さん。


「時間も勿体ないのでそろそろ…」


「わかった!15枚や!これ以上は無理や!」


「いいでしょう。黒い箱のお菓子を10箱で金貨150枚ということで交渉成立ですね。」


「イリーナ、用意してきて。」

イリーナさんがバタバタと応接室をでていく。


「今回初めてのお取引という事でサービスにこれを差し上げましょう。」


「なんや?なんかくれるん?」


ちゃらららっちゃらー

「鑑定眼鏡ー!の魔導具です。」


「鑑…定やて?」


「その眼鏡をかけて調べたいモノを見ながら魔力を流してみてください。」


「・・・・・・。ふーん、えらい便利やなぁ、有り難うなメイザルグ伯爵家のレオン様?」


「いえいえ、って…あれ?」


「いやぁ、ほんまに便利やわぁ!

偽装の魔法かいな、そんな魔法聞いた事無かったわぁ♪」


やっちゃっちゃー!!!

まさかボクを鑑定するなんて思って無かったから無防備だったぁぁぁ!!


「たすけてぇ!マイキェーウ!!」


「レオン様、詰めが甘かったですな」


夕霧さんの後ろに姿を現したマイケル。


「では、一旦このメギツネは私がお預かりしましょうか。」


ガシッと夕霧さんを掴んだマイケルはそのまま窓から夕霧さんとともに出て行った。


「あ、え…ま、いっか」


「お待たせしましたー!ってあれ?夕霧さんは…」


「あぁ、なんか急用みたいで窓から出ていかれましたよ?」


「えぇ!?」とイリーナさんはびっくりしていたが嘘はついてない。


「で、では、こちら金貨150枚です。ご確認ください。」


「はい、たしかに。では私はこれで。また宜しくお願いしますね。そうそう、これ、食べてください。冷たくて美味しいですよ♪」


ミルクベースの棒アイスをイリーナさんに手渡す。


「それは噛んじゃダメですよ?そうそう、パクッと咥えて…あぁ、垂れてきたのはペロペロして、そうそう零さないように。もっと舌を使って!」


「あの!なんかヤラシイ事させてません?」


「ハハ!ご冗談を。美味しいでしょう?」


「はい、今まで味わった事のない氷菓子でとても美味しいんですけど…好きなように食べてもいいですか?」


そういって先端をガリッと齧り、噛み切ってしまった。


痛っ!と思わず股間を抑えるとイリーナさんのジト目がね…


ごっつぁんです!


「ハハハ、冗談ですよ…ではまたぁ」


前世あわせて30過ぎのおぢちゃんだからね。

つい出ちゃったよね。







※作者よりお知らせ

いつもお世話になっております。

にゃんぺろです。


今回のお話で毎日投稿は終わりです。

お話は続けますので気が向いたらまたお読みいただければ作者が喜びます。


ではまた次のお話で。

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