第49話 商業ギルド




商業ギルド



「ようこそ、商業ギルドへ♪

本日受付を担当させていただきますイリーナです。」


「こんにちは、私は各地を回っている商人でアスランと申します。商品の買い取りはこちらでもしていただけますか?」


「買い取りですか?勿論承っております。商業ギルドの会員証はお持ちでしょうか?」


「いえ、今回こちらへは初めて来たもので。会員証は無ければダメなのでしょうか?」


「会員証は商人の身元をギルドが保証するモノなので無くても問題はありません。でも、年会費は多少かかりますが作っておいた方がお取引の際に有利になりますよ?」



今回ボクは偽名を使い、商品の買い取りをしてもらおうと商人ギルドへ来ている。


もちろん見た目も魔法で偽装している。

クリーンの魔法を作った時にいくつかの魔法を一緒に作ったんだけど

この偽装魔法「ディスガイズ」もその1つだ。


王都で金儲けをしようとすると10歳の子供では色々と不都合がありそうなので見た目も声も大人に偽装する事にしたのだ。


イリーナさんから商業ギルドの説明をうけ会員証を作ってもらう事にする。


「では、最後にお顔を見せていただけますか?」


偽装魔法ディスガイズで成人男性になっているボクはマントのフードを目深にかぶり、さらには仮面を付けて顔が見えないようにしている。


「見て楽しいものではありませんが…」


「犯罪歴のある方や指名手配されている方に身分証を発行する事はできませんので…。」


「わかりました。では…」


イリーナが見たアスランの顔はとても整っていた。

が、顔の半分が火傷のような痕が残っており悲惨な状態だった。


「いやぁ、お恥ずかしい。

酸を吐く魔物にやられまして。」


「いえ、規則とはいえ…」


「お気になさらず。」


2人の間に少し気まずい空気が流れたがイリーナさんはプロとして手続きを続けてくれた。


「お待たせいたしました。これでアスラン様の身元は商業ギルドが保証する事になります。商人として恥じないお取引を心掛けてくださいね♪」


「はい、有り難う御座います。」


「では本日は買い取りご希望とのことでしたがどのような商品でしょうか?」


これ見よがしにマジックバッグを見せつけながら「こちらを」と声をかけつつ中身を取り出す。


このわざとらしい動作にも意味があり

貴重なマジックバッグを所持している商人だと認識させるためだ。


取り出した黒い箱をテーブルの上に置きイリーナさんに向けてふたを開ける。


「これは?凄く甘い…良い香りがしますね」


「とある国で見つけたとても貴重なお菓子です。あ、中身に触らないよう気をつけてください。人の体温で溶けてしまうので。」


中身の高級チョコを手に取ろうとしたイリーナさんに注意しておいた。


「ですが見ただけでは買い取り出来ないのですが…」


「そちらはその箱がセットになっておりまして、1つ欠けてしまえば値打ちが下がってしまいます。なのでこちらを。」


マジックバッグから今度は綺麗に個別包装された小さな高級チョコを取り出し黒い箱はマジックバッグにしまう。


「何種類か出すのでどうぞ手にとって確認してください。そちらは試食用なので食べていただいても構いませんよ。」


「で、では…」


「おかしなモノではないので大丈夫ですよ?」


さすがに初対面の人間から差し出されたモノを口に入れるのは躊躇いがあるようでなかなか口にしないイリーナさん。


この世界には鑑定魔法が無いらしいし食べ物は実物を口にして確かめるしか方法が無いのだ。


「困りましたね…では、イリーナさんはどれを選びますか?それを私が食べましょう。」


イリーナさんは目の前のモノを指定。

ボクはそれを手に取り包装を剥がしてポイッと口に入れる。


「うん!美味しいです♪さすが王族や高位貴族に好まれるだけはありますねぇ。商品を口にするのは久々ですがこれは止まりませんね♪この甘さの中に香るほろ苦さのバランスは絶品です!ではこちらはどのような味かな?」


さすがは日本でも人気がある高級チョコだ。濃厚なカカオの香りと軽やかな口どけ、後に残る余韻まで楽しめる。

マジックバッグからポットとティーカップを出して淹れたての紅茶を注いで1人でアフタヌーンティーを楽しむ。「この紅茶もなかなか♪」などと煽りながら。


そうしてテーブルに出した5つのうち4つのチョコを食べてしまう。

最後の1つを手に取り包装を剥がして口に入れようとすると


「あ、あの!

私も1つ食べてもいいですか?」


「試食用は他の街にも持っていかねばなりませんし…もうこちらにお出しできるのはこの1つなんですが…」


「それで結構なので!できればその…お茶も!」


「はい♪ではどうぞ?」


ティーカップをもうワンセット出して紅茶を注ぐ。


「わぁ、このお茶、凄く香りがたっていて美味しいですね♪

ではこちらのお菓子もいただきます」


口に入れさえすればもう後の祭りである。


「アスラン様!す、少しだけお待ちいただけますか!?」


そう言うと階段を駆け上がり消えて行った。


これまた定番のギルマス登場か?




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