第41話 実験



夜、1人の時間を勝ち取ったので新たな魔法をいくつか作成した。

朝になったら試してみよう。


翌朝の朝食後。


「マイケル、新しい魔法の実験がしたいから手伝ってくれる?」

「かしこまりました。」

「主殿!私もお手伝いするぞ!です」

「う、うん、そうだね。」


まぁ、いっか。


3人で外へ出て収納からバケツを取り出す。


「じゃあそのバケツの中身を半分ずつ頭からかぶって?」

「なっ!?」

「あ、主殿?なんだかウ●チの臭いがするんだが…」


あまりの驚愕に言葉を詰まらせるマイケルと語尾を忘れるティナ。


中身は泥に馬の糞を8:2で混ぜたモノだ。

臭いの成分が必要だから仕方がないのだ。


「そ、そうです!護衛騎士にお願いしてみましょう!」

マイコゥが護衛騎士を身代わりにして最悪を回避しようとしている。


「わ、私は訓練しなきゃだった!

ではまた後ほどぉぉぉぉ…」

最大速度で逃げるティナ。


ふむ。

やはり自ら汚れるのは…

いや、正直に言おう、糞の臭いが…

よく考えなくともウ●チを頭からかぶれと言われて「喜んで!」と返事できるのは特殊な性癖の方々でなければ無理だろう。


うん、ボクも嫌だ。


!まだまだレオン君への愛が足りないわね!」


糞だけに?


「レオン君、私達がお手伝いするよ?やっぱり私達しかいないよね?


ウン●なだけに?


協力的な姉ーずの優しさが沁みる。

でもさすがに姉ーずにアレをかぶらせるわけには…


・・・・。


「姉様、凄く嬉しいのですがお気持ちだけで…

え?そうですか?そんなに言われると…いやぁ、困ったなぁ。

う~ん、そこまで言うならお願いしようかな?」


バケツを手に姉ーずの方に歩みよっていくと


「え?そんなに言ってない…よね?」

「レ、レオン君?この臭いは?そのバケツの中身って…まさか…ち、違うよね?」

「待って!何かにおうんだけど!?

まずはそのバケツを下に置いてお話しよ!ね!?」

「レオン君!そんなニコニコしながら距離を詰めないで?ね!?止まってぇぇぇ!!」


ゆっくりとにじり寄るボク、

ジリジリと後退あとずさる姉ーず。


「大丈夫、すぐに綺麗になります?」

「どうしてハテナなの!?」

「そこはちゃんと言い切ってほしいのだけれど!!」

「アハハハ、もうお姉様達ったら心配症だなぁ。たぶん大丈夫だよ?うん、きっと大丈夫?」

「待って!お願い!!」

「レ、レオン君?ゆ、許して!」

「大丈夫大丈夫♪」ニコッ

「そ、そんな最高の笑顔はこの状況で浮かべるモノなの!?」


目に涙を溜めて許しを乞う姉様達に少し興奮してしまうのはきっと気のせいだよね。

姉ーずは助けを求めようとマイコゥにチラチラと視線を投げかけているが…

そのマイコゥ本人はツユダク状態の汗をかきつつ木の影で明後日の方向を見ながら口笛を吹いている。


見捨てたな?マイコゥ…


「アハハ、冗談ですよ。

ボクが姉様達にそんな非道ひどい事をスルワケナイヨー。」


「あ、あの!」

「私達で宜しければ」


話しかけてきたのは元見習い冒険者の2人、

ジュリア(13)とソーニャ(14)だ。


「本当にいいの?」

「はい、レオン様のお役にたてるのなら」

「レオン様の為なら!」


遠くの物陰からこっちを見ているエロフをジィィィっと見ると慌てて隠れやがった。


マイケルはまだ口笛を吹いている。

仕事しろ。


「うん、わかった。ありがとうね」

「そんな!」

「お礼など必要ありません!」


おい、なんだこの2人の忠誠心?は。

捨て犬に懐かれた感じか?

なんかもっとこう…まぁいいや。


「ごめんね、少しにおうけど鼻をつまんでても大丈夫だから。」

「「はい!」」

「じゃあ目を閉じて鼻をつまんで~」


柄杓に泥水をすくい2~3回2人にぶっかける。


おっふ、思ったより酷いなコレ。

すぐに綺麗にしてあげなきゃ!


「いくよ!パーフェクトクリーン!」




※説明しよう!

レオンの使うパーフェクトクリーンは身体・衣服・装備品などに付着した汚れと判断できる物質を分解し蒸発させてしまう魔法だ!

副産物として皮脂や老廃物までも分解してしまう為、クリーン後は髪や肌が若返ってしまうのである。

さらに体内細胞を活性化させることで表皮に潤いをもたせるとこまでがレオンの作ったパーフェクトクリーンのパーフェクトたる由縁である!



「うん、成功だね。

もう目を開けていいよぉ」


2人は鼻から手を離しゆっくりと恐る恐る目を開く…


「わぁ!ソーニャの服が新品みたいになってるよ!」

「ジュリアもそうだよ!それよりジュリアの肌がワントーン、いえツートーンくらい白くなってる!」

「え!そうなの!?あ!ソーニャもお肌が!髪も!!」


2人はお互いの髪や肌を触りっこして確認しあいながらキャッキャと小躍りして喜んでいる。

思ってたよりも効果があるようで良かった。


「少し匂いを嗅いでもいいかな?」

「はい!どうぞ!」

「す、少しだけなら…」


ジュリアは手を広げて「どうぞ♪」と胸を張っている。

ソーニャは…おい


「ソーニャ、スカートは捲らなくていいから」

どこの匂いを嗅ぐと思われたんだ?


「ハッ!?ごごご、ごめんにゃさい!私ごとき街娘風情が…」

そういう意味じゃないから。

貴族だろうが街娘だろうがスカートの中の匂いを嗅ぐことはないから。


「スンスン…うん、2人共良い匂いだね」


2人はまたもやキャッキャと小躍りしている。

これが普通の女の子なんよ。

わかる?そこに隠れて見ているエロフよ。


そこに近づくのは姉ーず。

「少し良いかしら?」


姉ーずはジュリアとソーニャの髪や肌を見て触ってヒソヒソと話込んでいる。


「レ、レオン君!私達も」

「いえ、今日できる実験は終わったので。」


さっき拒否ったので今日はしてあげないのだ。


「「えぇー!!そんなぁ」」


「あ、主殿…?」

「ダメ。」

「あぅん!そんな即答とかぁ!」

「早く特訓してきなよ。」

「そんな虫けらを見るような目でぇぇ!」

変態エロフは後でジメッとした陰湿なお仕置きをすると決めているのだ。


「ソーニャとジュリアはこのあと一緒にオヤツ食べようね♪」


2人はしばらく優遇するのだ。

そりゃそうでしょ?


この後、2人に良く冷えたシュークリームを出してあげて一緒に食べていると

姉ーずと駄エロフが物欲しそうに窓の外から覗いていたのは見なかった事にした。




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