第39話 ダンジョン




木々が鬱蒼と茂る魔物の森の中、不自然な空間がある。

その空間は直径約150メートルほど。

一面には雑草1つ生えておらず土が剥き出しになっておりその中央には高さ3メートルほどの岩山がポツンと立っている。

岩山に近づくと岩山には不自然なドアが付いていた。


「さて、準備はいい?」

「いつでもいいぞ!です!」


ティナはワクワクを隠せておらず扉て手を添えてボクからの突入の合図を今か今かと待ち構えている。


「よし!行こう!」

「ヒャッホー!!!」


ティナが世紀末的な叫びをあげ扉を力一杯押し開…く?


「ぐ、ぐぬぬぬぬ!!主殿!扉が開かないぃぃぃ!!!!」


魔法的な封でもしてあるのか扉はピクリとも動かないようだ。


マジかー。

せっかくここまで来たのに入れないとかないわー。


「ティナ、交代。」

「ハァハァハァ…もうむりぃ」


顔真っ赤で息を切らせてもう無理って

なんか捗りそうな…

いやいやいや!いかんよ!レオン君は5歳なんだ!

レオン君のレオン君も中指くらいしかないんだから!って何を考えているんだぁぁぁ!!

このエロフのおかげでどうも調子が…


なんとか邪念を振り払い扉の取っ手を…

ん?取っ手??


取っ手を掴み手前に引いてみると扉は呆気なく開く。


「ティ…ティナさんや?」


ティナはうつむいて身体をぷるぷるさせている。

ついでにレザーアーマーの胸元から見える谷間様も真っ赤になりながらプルプルしている。

うわぁ…体全体が真っ赤だぁ。

普段が色白だから余計に赤くなるとわかりやすいんだよなぁ。

これアニメとかなら頭から湯気でるヤツだよね。


「あの、」

「言わないでぇぇぇ!!!」

後ろを向いて「くぅっ!」と唸っているティナがなんともおバカ可愛い。


「と、とりあえず入ろうか」


彼女を初めてホテルに誘うみたいなニュアンスになってしまっているが違うからね?


うわぁ、これがダンジョンか。

「ぼんやりと明るいな、ですね。」

「うん、壁がうっすらと発光してるみたいに見えるね。」


扉から入った所は扉以外は出入口が見当たらない四角い部屋だった。

一番奥に台座があり石板が置いてある。

石板を見てみると魔法陣が刻んであるので読み解いてみるとダンジョン内でのみ可能な転移の魔法陣だった。


つまりは各所に設置してある石板と繋がっているので魔力を流せば指定した石板の場所へ転移できると。


ゲームとかでよくある設定だよね、これ…

まあ、石板さえ見つければ移動が楽になるしヨシとしよう。


ティナの手を引いて一階へ転移する。

ここも入り口と変わらずぼんやりと壁や天井が光っているので視界はまあ良好だ。


転移した場所からは少し下り坂にはなっているが一本道なのでひたすら進んでいく。

罠も無くモンスターも出ず…


「まだ1階だしね…ハハハ」

「主殿、油断は禁物だ、ですよ。」


5分くらい歩いたころ

「ん?なんだ?ティナ止まって!」

「主殿?」


なんだか景色に違和感あったんだけど…なんだろ?

「少し天井あたりが…気のせいか?」

違和感を感じた場所を指差しティナにも見てもらうが何もわからない。

しかしダンジョンの中で違和感をそのまま放置するのも怖いので試しに落ちていた小石を前方に投げてみた。


すると天井の一部がゆらぁっと歪み小石の落ちた場所へ移動しだしたじゃないか。


「主殿、あれはスライムだ、です。」

「え?」

「いや、だからスライムだ」

「嘘だぁ、スライムといえばタマネギみたいな形で半透明で水色っぽくて顔が浮かんでたり…しゃべったり」

「何を言っているんだ?スライムに色や形があるわけないだろ、でしょ?

顔ってなんなのだ…人面スライムか?気持ち悪い」


ティナは両腕で自らの体を抱きブルルッと震えていた。


わかってた…わかってはいたんだ。

ボクが想像してたスライムは創作物、

始まりの街付近に出没する笑顔の可愛いヒットポイント2~3の青いヤツだと。

魔王に覚醒したりテイムするとピギーッと声を発したりフェンリルと仲良くなったり…

夢みてんじゃねぇよチ●カス野郎!と言われてもしかたがないけどさ、

リアルって本当に残酷だよね。

実際は無色透明の卵の白身でした…


ボクが言葉をつまらせて意気消沈しているとティナが無表情で詠唱を始め人差し指から火炎放射器のような炎でスライムを焼き尽くしていた。


「なんか…ごめんね?」

「主殿は狩りを始めて日が浅いからな、しかたない、です。」


ティナ曰く、スライムは一切人の役にはたたないが森や遺跡やダンジョンで掃除屋として活躍している自然にとっては便利な生物らしい。


で、ここで思ったのが今後の課題が1つ増えたということ。

気配察知の強化が必要だよね。

スライムみたいに存在自体が微妙な魔物とか殺気?敵意?みたいなのが無い存在に対して無防備過ぎる。

気づかずに踏んでしまって足が溶けちゃった、てへ♪では済まない時も出てくるかもしれないしね。


ダンジョン内部でいちいち千里眼使うのも集中する分逆に危険だし…


戻ったらマイケルに相談しよう。


そんなこんなで1階は一本道でスライムしか出てこなかったので2階への階段へ進む。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る