第35話 淘汰




ニチャアっと口角を上げて嘲笑うかのように声をあげているデカいゴブリン。

確かに今のボクの実力では倒す事は出来ない。


だが…


念動力!

前世の能力を使えば無敵なんだよ!


まずはデカゴブを浮かせてしまう。

こうすれば手に持った棍棒と盾を投げる以外に攻撃方法は無い。

当然身動きも封じているので投げるどころか唾を飛ばすことすら出来ない状態だ。


「よぉ、さっきはよくも家のモンをやってくれたな?」

「ゴッ!ゴギャア!!(お、俺じゃない!)」

「何言ってんのかわかんないが?サンダーボルト!」

「ゴバババギャギャ!!」


ボクの指先から雷がほとばしりデカゴブを焼き上げる。


「ゴ、ゴブゥ…(俺じゃない…)」

プスプスと煙を体中からあげながら何か言っている。

「ごめんなさいは?サンダーボルト!」

「ゴギャアアアア!!!

ゴブゴブゥ…(ごめんなさいぃ)」


こいつ、たぶんボクが言ってること理解してるな…でも


「ゴブゴブじゃなくてごめんなさいだろ?サンダーボルト!!」

「ゴブアアアアアアア!!!

アギャギャ!ゴブァグキャア!!

(だから!あやまってんだろ!)」

「あー、何言ってんのかわかんないなぁ。これきっと悪口言ってるよね?」


後ろの2人に同意を求めてみた。

「左様ですな。」

「悪口だー、もっとやっれー!」

「グゴギャギャア!!(言ってないって!)」

「やっぱそうだよねぇ…サンダーボルト!」

「ゴギャアアアア!!!」


デカゴブの皮膚は炭化してきているがまだ叫ぶ元気があるみたいだ。


「よし、こうしよう!

今から少しずつおまえを凍らせていく。全身凍ってしまう前にごめんなさいを言えたら見逃してやる。1分だよ。アイスプリズン」


デカゴブが空中に浮いたまま足から徐々に凍っていく。


「グギャギャバザイー!」

「グギャンバザー!!」

「グベンバザイ!!」


おぉ、だんだんそれっぽくなってきたな。


「グ、グベンダザイ」

「ん?ごめんください??」

「グメンナザイ」

「グメンナザイ」

「グ、ゴ、ゴメ」

「ゴ、メンナ、サ、イ」


おー!すげぇ!言いやがった!!


首の下辺りまで凍ってきていたがそこで魔法はストップだ。

約束だからな。


「主殿?本当に助けるのですか?」

「・・・・・。」

「ま、約束だからね。よし、奥に行くよ。マイケル、動ける?」

「はい、戦闘は無理ですが移動くらいなら大丈夫です。」

「マイケルさん、なかなかの量を出血してたもんな。無理するんじゃないぞ?」

「行こうか」

「ゴブ!グギャギャゴブフー!!

(おい!俺を降ろしてから行け!)」


デカゴブが何か言ってるがやはり理解出来ないししたくもないので無視して進む。


さて、奥へ進むと…これなー。

どうすりゃいいんだ?これ。


「マイケル、ゴブリンの子を妊娠した人はどうなるんだろ?」

「ゴブリンに種付けされたモノはかならずゴブリンを産みます。ゴブリンのメスならそのまま、他の種族のメスなら腹から出てきた子供ゴブリンに餌として喰われます。」

「捕まって犯されたこいつらはもう正気じゃないみたいだ。ですね。」


そりゃそうか…あれだけいたゴブリンに妊娠するまで犯され続けてたんだもんな。しかもゴブリンの子を産んでそいつらに喰われる未来しかないんだ。正気でいられるわけがない。

もしここで母体だけ助けて連れ帰っても待っているのは…


「もっと早く助けてあげられなくてごめんなさい…アイスプリズン」


見ていられない…

出産場全体を一瞬で凍らせを砕いた。

あとに残ったのは魔力を使わない限り決して溶けない氷の粉のみ。


ボクは涙を拭い先へと進む。


牢屋に捕らわれていた人達を救出し広場まで戻ると宙に浮かんだ凍ったデカゴブがまだわめいていた。


「ああ、そうだ忘れてた。さっきは見逃したけどもう今は期限切れだよね。さっきはさっき、今は今ってね。」

身体強化して凍ったデカゴブに腹パン一発。

首から下が粉々に砕け散ったデカゴブ。

頭だけになって涙を流しながら「ゴメ…ン…ナサ…イ」と言っていたのが嫌な気持ちにさせる。

謝るくらいなら最初からやるなよ…。


わかってる。

この世界でも自然の摂理があって生きてるモノは生き続けるために活動してるって事くらい。

おまえたちが弱肉強食で他の種族を襲うように、人種であるボクはさらにそれらを淘汰する。

だからボクはおまえたちを許さないし助けようとも思わない。

おまえたちが他の種族に情けをかけないのと同じように。



・・・・・・・・・・



助けた人達は全員がハンターでパーティーを組んでいる仲間だそうだ。

例の罠にかかってしまい攫われてしまったと。

数時間おきに仲間が1人、また1人と連れ出されていく。

手前の部屋からは戻ってきたらしい仲間の声が聞こえてきたが、

気が触れたように笑い、泣き、叫んでいた。

絶望感で悲しむ事すら出来なくなっていたところにボクたちが助けにきたと。


捕まっていた人達は自分で移動する事が可能なようだったのでティナさんとマイケルに先導してもらい先に別荘へ戻ってもらった。


そしてボクは…



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