第34話 油断
魔物の森のこんな浅い場所で危険な罠を仕掛けているゴブリンがいる。
領民の安全を考えると放ってはおけないよね。
「ボクはその頭のいいヤツを探す事にしようと思う。」
「応援を呼ぶ事をオススメします。」
「私は主殿に従う、ます。」
「こんな罠を考えつくヤツがいるんだ、集落もしくは村のような巣があるんだと思う。そこでリーダー的存在が下っ端を動かして森に入ってきた者を襲わせている。その住処を見つけて、できれば潰してしまいたい。」
「危険すぎます!」
「それでもボクは行く。
ティナさん、だいたいでいいから巣がありそうな方角とかわかる?」
「たぶんこっち」
「なんで?」
「多くの足跡が残ってる、です」
「うん、じゃあ集中するから少し静かにしておいてね」
千里眼!
ボクの思念が森の上空を移動しながら異変のありそうな場所を探す。
数分後、おやおやぁ?
岩壁の亀裂の前にゴブリンが二匹…ってこれ絶対見張りしてるよね!?
怪しさ全開なんですけど!
そのまま中へ千里眼を進めていくと
そこはまさに地獄と呼ぶに相応しい場所だった。
大きく広がったスペースの入り口横には色んな生き物の骨が散乱しており中には人骨らしき物もある。
中央あたり、というより至る所でゴブリンのオスとメスが交尾している。
そして広場の一番奥にはひときわ大きなゴブリンが何の肉かわからないけど生の骨付きの肉をクチャクチャと食べながら人型の女性を犯していた。
巨大なゴブリンのいる場所の後ろに奥へ続く穴があり、そこへ進んでいくとお腹をパンパンに膨らませたゴブリンのメスや人型の女性が今まさに出産中だった。
さらにその奥には牢屋のようなものが複数あり男女別々に収容されている。
女性の方はたぶん犯される順番待ちだろう。まだ何もされていないようで衣服もしっかり着込んでいる。
小さい子までいるじゃないか。
男性の方は…食料って感じか。
みんな絶望した顔をしている…
「いくよ」
「見つけたのですか!?」
「うん、岩壁の裂け目に巣を作ってた。」
「ではすぐに戻って応援を!」
「ダメ。捕まってる人達がいるから応援なんて呼んでる時間がない。」
「主殿、すぐ行こう!です!」
「マイケルは別荘に戻って待ってて。僕が夜までに戻らなかったら助けを呼んでくれる?」
「私も行きますぞ!レオン様を1人でそんな危険な場所に行かせるわけにはいきません!」
「私も行く!ます!」
「ハァ…じゃあ絶対に無茶はしないで。後ろを守ってくれる?」
「わかりました。(いざという時は私が盾になる)」
「はい!」
「じゃあ簡単に説明するよ?
入り口には見張りが2匹、奥に進むと広間があってそこにはざっと150匹、さらに広間の奥に凄い大きな個体が1匹。」
「大きな個体!?まさか…キングか!」
「わかんないけどそのデカいヤツのさらに奥に牢屋があって人が捕まってた。」
「キングを倒さないと助け出せないということですな。」
「うん、問題は地形でさ、岩壁の中だから大きな魔法が使えない。大きな振動が起きると下手をすれば崩れてくる可能性があるんだ。
でも数が多いから出来るだけ静かに一気に多くの雑魚を殲滅したい。」
「はい。」
「だから小さな魔法でゴブリンの頭を連続で狙撃する。」
「さっきの魔法だな!ですね!」
「うん、でも数が多いから討ち漏らしがでると思うんだ。それをお願いしたい。」
「はい!」
「お任せを。」
「じゃあ行くよ!転移!!」
裂け目の入り口から少し離れた場所へ転移したボクたち。
まずは入り口の見張りを…
マイケルとティナさんがフライングゲット。
マイケルはいつもの隠密行動で後ろから首を掻き斬り、
ドサッと倒れたゴブリンをもう一匹のゴブリンが見つけて声をあげようとした瞬間正面からティナさんが恐ろしいスピードで接近、縦に真っ二つに切り裂いた。
「あのー、なんでそんなヤル気だしちゃってんですかね?」
「フッ」
「これくらいは余裕だぞ!です!
だから帰ったらほめて?」
「・・・・行こうか」
なぜかヤル気満々でボクの前を行く2人。
もう何も言うまい。
前方は2人に任せて広場まで魔力を練りながら進んで行く。
途中で遭遇するゴブリンも嬉々として瞬殺していく2人を無言で見守りながら歩く。
広場に到着する頃にはかなりの魔力の塊がボクの頭上に渦巻いていた。
「こ、これは…」
「くっちゃいでちゅ」
マイケルは広場の光景を目にし驚愕している。
ティナさんは鼻をつまんで赤ちゃん言葉。
あんたのせいで緊張感ゼロだよ!
「じゃ、やっちゃうから生き残ったヤツの殲滅をお願いね。
あ、それと合図するまで前に出ないでね?間違って射抜いちゃうかも。」
返事を待たずにぶっ放す事にした。
「ウィンドアロー!」
頭上に渦巻く魔力の塊から小さな風の矢が雨のように放たれる。
もう面倒くさいから狙いなんてつけずに乱射だ。
降り止まない風の矢の無差別攻撃に今の今まで交尾に熱中していたゴブリンたちだったが、
頭を撃ち抜かれ声も出せずに絶命するもの、体中穴だらけになっても生きてるものなど様々だ。
で、一番奥のデカいやつはというと、
今まで犯していた人型のメスを放り投げ、デカい体を覆えるほどの盾に身を隠していた。
頭上の魔力の塊がどんどん小さくなり、やがて消滅すると風の矢の雨もやむ。
盾から体を出したデカいのがこちらを見て顔を歪ませる。
「グギャ!ゲキャキャキャキャ!」
怒ってるのか笑ってるのか?
まあいいや
「じゃ、まだ息のあるヤツの殲滅お願いね?デカいのはボクがやるから。」
「お任せを。」
「はい!」
収納からショートソードを出してそのままデカいのに突っ込む。
上段からの斬撃を易々と盾で防ぐともう片手にもったまさに鬼の金棒といった形のトゲトゲ付き金属の棍棒を横薙ぎに振ってくる。
盾を足場にするように蹴りつけて少し距離をとると追撃に棍棒を上段から力任せに叩きつけてきた。
受けるのは不味いと側面に緊急回避すると、ドゴーン!と地面を抉る威力に2メートルくらいのクレーターができた。
休む間もなくそのまま攻撃を再開するが全て巨大な盾に防がれてしまう。
「グェッケケケケケケ!」と嘲笑うかのような声をあげニチャアっと口角を吊り上げるデカいゴブリン。
身体強化を最大まで強め連撃を打ち込むが全て盾の移動だけで防がれてしまう。
うーむ、やっぱこの身体じゃこのあたりが限界みたいかなぁ。
距離をおきそんな事を考えていると
「坊ちゃまぁぁぁ!!!」
マイケルがこちらに突進して
あっ・・・・・
広場の壁のデコボコに隠れていた一匹のゴブリンの矢がボクを庇ったマイケルを貫いた。
「あああああああ!!!!
そんなぁ!マイキェーーーゥ!!」
矢を放ったゴブリンはティナさんに瞬殺された。
腹部を貫かれたマイケルは咳き込むと口から血を吐き出して
「レオンさ…ご無事…何よ…です」
「ああああ!そんな!ボクがゴブリンで実験したりして遊んでたから!ボクが油断したから!!マイケル!死んじゃダメだ!マイケェェェウ!!」
マイケルの出血は止まらない。
マイケルを抱きしめて泣き叫んでいるボクを見てデカいゴブリンが
「ゲェッキャキャキャキャ!!」とこちらに指を指してわめいていた。
「あの、主殿…」
「あぁ!マイコゥ!!
死んじゃヤダー!!」
「主殿!回復魔法を!!」
「・・・・あ 」
気が動転してて魔法を忘れてた…
「パーフェクツヒーーーゥル!!」
腹を貫かれて大事な臓器を損傷してしまっていたマイケルだったが
ものの数秒で完治する。
パーフェクトヒールを使う時は念動力で魔力循環を早めるサポートもしているので自己回復速度も爆上がりなのだ。
「ふぅ…レオン様、私はこのまま見捨てられるのかと…」
「ち、違うんだ!ちょっとあわてちゃっててね?魔法の存在自体を忘れちゃってたっていうか…
ゴメーンネ?テヘペロ」
「なんだかそのテヘペロというのが無性に苛立たしいのですが」ピクピク
「マイコゥ!死んじゃヤダー!!だって、主殿可愛い♪モエモエー」
「モエモエすんなやぁ!もぉ!」
「とりあえずマイケルは休憩してて、ティナさんはマイケルの警護!」
「「はい(!)」」
もう速攻で終わらせる!
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