経験

第26話 ホワッツ!?マイコゥ



屋敷に到着して奴隷の子を客間へ運ぶ。

「マイケル、誰も近づけないようにしてくれる?」

「かしこまりました。」


奴隷の子の着ているぼろ布を異次元収納にしまう。

出てきた身体も顔と同様、腐り、爛れ、肉が落ちてしまっており骨が見えている。


ここで本当に回復してしまってもいいのか疑問が出てきてしまう。

もし、この子が望んでいなかったら?

本人が死んだ方が良かったと思っていたら?


1人で考えたって答えなんて出ない。出るわけがない。


だったら!


奴隷の子の額に手をあて集中する。

精神感応発動!


『生きたい?』


『生きたい!あいつらに復讐したい!絶対許さない!!』


『じゃあ治してあげる。

けどそのかわり治ったらまずはボクの言う事を聞くって約束できる?』


『何だってする…あいつらに復讐できるのならなんだってします!!』


『わかった。ボクはレオン、今からキミを治療する男だよ。』


『私は…ティナ。』


いくぞ!

「パーフェクトヒール!」


魔法陣が発現し、そこに一気に魔力を流す。

腐敗が止まり身体の中から細胞が活性化し始める。

新陳代謝が何百倍もの速度で進み細胞が記憶している元の姿に戻っていく。

もっと早く、もっとだ!

さらに魔力を込める!


「おぉ!」


あ、マイケルは部屋の中にいたのね。

いつでも対応できるようにドアの前で待機してくれていたようだ。

精神感応に集中してしまって見落としちゃったけどまあいい。

元々気配を消してる人だしわからなくても仕方がないと割り切ろう。


よし、身体は回復したね。

次は首輪の効果を消さなきゃまた腐り始めちゃう。


「マイケル、この首輪って取れる?取っても大丈夫?」

「その違法な首輪は装着した人間にしか外せないように魔法でロックされているはずです。そう簡単には…」


首輪に触れてみるとバチっと電気が走る。

痛ってぇ!スタンガンかよ!


魔法陣を構築して解除するか?

いや、出来るだけ早く外してあげたい!

痛いけど我慢するか?

我慢出来るか??

首輪の魔法が発動する前に出来るかどうか。


よし!やるか!


集中力を限界まで高め…首輪に手をかけた瞬間、青白い光が稲妻のように手に向かってくる!

が、電気が手に到達する前に収納成功だ!


「き、消えた!?」


ぉう!マイケル!

そんな近くで見てたのね?


さて、これで完了といきたいとこだけど念のために

「パーフェクトキュアヒール!」


呪いとか毒素とかが身体に残ってたら厄介なので状態異常も回復しておく。

「やっぱり、まだ呪いみたいな効果が残ってたね」


キュアヒールをかけたボクの魔力に抵抗感が伝わってきた。

でもそんなの関係ねぇ!!

一気に魔力を注ぎこんで完全に除去だ!


「ふぃー、疲れたー」

「お、お疲れ様でした…」

「エルフの女の子だったんだね。」

「そのようですね…」


マイケルは気のない返事をしている。


さてさて、すっぽんぽんのエルフの女の子をこのままにはしていられない。

とりあえず応急で布団を掛けてあげて、と。


「マイケル、何か着る物とお腹に優しい食事をお願いしてもいい?」

「…かしこまりました。」



・・・・・・・・・・・・



時は少し遡り…



執事マイケル


レオン様は誕生日を迎え5歳になられてから驚くほど成長された。

もちろん精神的にだ。

このまま成長されればメイザルグ家もさらなる発展を期待できるだろう。


そんな事を考えていると馬車が急停車したではないか。

ケントに聞いてみると人が倒れたと。


外に出て倒れた人物の下へいくと何とも言えない悪臭を放っている。

これは何かの病気か?

伝染病などなら危険だ!


む!?この首輪…闇ギルドか!


ハッ!?レオン様!


まさかとは思ったがレオン様は首輪の呪いで病気にかかっているかもしれない者を抱え、屋敷にて治療すると言い出した。

もし、もしも!万が一!!この者が感染する病気だったとしたら旦那様や奥様になんと報告すれば良いというのか!

危険だ!危険すぐるぅ!!

現にこの者は生きながらに肉が腐り落ちているではないか!!


もうダメポ…

死んで詫びるしかない。


屋敷に戻ると客間に入る。

レオン様が他の者を近づけないように厳命なされた。

レオン様も呪いの症状を見て他の使用人達の安全を考えてくださったのであろう。


いや!違ぁぁぁう!まずはご自身の安全をーーー!!!


そんな私の心配をよそに

レオン様は奴隷の額に手をあて考え込んでいる。


病院から治療士を呼ぶのか

教会から神父を呼ぶのか迷っておられるのであろう…


「パーフェクトヒール!」


は?

いやいやいや、待て待て待て!

レオン様の右手から見たこともない魔法陣が発現している!?

え?いつ詠唱した?それに奴隷がみるみる回復…いや、復元していくではないか!


「おぉ!」


私ともあろう者が思わず声をこぼしてしまった…


首輪…それはかなり厄介ですぞ。


バチッ!

触れる事すらかなわないのか。


んなぁぁぁ!!!!


「き、消えた!?」

そんなバカな!


「パーフェクトキュアヒール!」


まただ!

今度はしっかりと見ましたよ!

詠唱せずに魔法を発動しているだと!

こんな事は有り得ない!

あったとしてもそれは神の奇跡!!

ま、まさか!

レオン様に神が宿っているとでもいうのか!?


レオン様は服と食事を用意するよう言われたのでメイドに指示をだすために一旦部屋を出た。


そういえば…

レイナルド様が急に魔法に目覚められた前の晩、レイナルド様の部屋からはレオン様の気配があった。


早朝にレオン様の部屋からレオン様の気配が忽然と消えた時もあった。


王宮の宝物庫にもあるかどうかわからないレジェンド級の魔導具のネックレスをご家族にプレゼントし、さらにはメイドと私にもくださった。


不思議な事だらけだが今考えると全て納得がいく。


これは…私は!どうすれば!?


『マイケル、部屋に入ってくるんだ』


!!!!!!!!

頭の中にレオン様の声が!?


『部屋に入るんだマイコゥ』


コンコン

「失礼します…」





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