第25話 兄様最強。そして



アリス

「ソフィアとは幼なじみなのよ。」


聞いてませんが?


ソフィア

「大貴族の集まりだから王族として顔を出しておけとお父様から言われまして。」


聞いてませんが?


レイナルド

「ハハハ、ソフィア様とは同級生なんだよ」ニコッ


聞いてませんが?


マリアナ

「ウフフフ、この中の誰かとあなたをくっつけようなんて考えてないわよ?」


聞いてませんがっ!!


エリス様、無表情で何を考えているのかわからないんですが!


エリス

「僕の事は気にしなくていい。僕は無能に興味はない。」


アリス

「あら、エリス様?レオン君を無能と?」


姉ーず

「「シャーーーーッ!!」」


エリス

「レオン?くんが無能とは言っていない。彼の容姿は天性の才能。」


マリアナ

ウチのレオンは旅の行商人からレアな物を仕入れる才もあるようですよ?」


エリス

「それは興味深い。」


姉ーず

「「興味持たなくていい!」」



・・・・・。

それからあーでもないこーでもないと女性陣は妙な方向に盛り上がり始めており、何故かボクが接待じみたことをしなくちゃいけない流れになっている。

面倒くさくなってきたなぁ。


レイナルド

「レオン?大丈夫かい?(解放してあげるから話をあわせるんだよ)」


ボクの異変にいち早く気づいたのは兄様。

ボクの後ろに立ち額に手をあててくる。


レイナルド

「これはいけない!お母様、レオンは熱がありますよ」


マリアナ

「な!なんですって!?」


お母様はガタンと椅子から飛び上がりこちらに走り寄ってくる。


マリアナ

「あぁ、レオン!気づいてあげられなくてごめんなさい!」


二年前の呪いの件からお母様はボクの体調不良にはとても過敏になっていて今も少し震えている。


レオン

「お母様、大丈夫ですよ。少し熱っぽいだけです。」


レイナルド

「お母様、レオンを屋敷に。」


マリアナ

「マイケゥ!マイキェーウ!レオンを連れて屋敷に戻ります!」


レオン

「お母様、ホストが先に退場するのはダメですよ。マイケルもいるしボクは1人で大丈夫です。」


マイケル

「奥様、おまかせください。」


レイナルド

「皆様ごめんなさい、弟が体調不良を我慢していたようなのです。この場は先に失礼させていただきます。」


兄様の機転によりレストランから脱出する事ができた。

あのままだと追いつめられて何か失言してしまっていたかもしれない。

さすが兄様だ。何があってもボクは兄様の味方でいるという事を改めて強く思った。



・・・・・・・・・・・・



レオンが去った後のテーブルはレイナルドが仕切り、レイナルドの醸す雰囲気もあり最後まで穏やかな時間を過ごしていた。


帰りの馬車


「お母様、レオンはしっかりしているようでもまだ5歳なのです。あまりプレッシャーを与えるような事は控えた方がよいのでは?」

「わかってます。わかっていたのよ。けど、5歳になってからのレオンがあまりにも優秀すぎて、つい5歳だということを忘れてしまう時があるのよ」

「そうですね、この数週間レオンと一緒に過ごしましたがまるで以前の事が嘘だったかのように成長しております。」

「今後はもっと気をつけるようにします。レイナルド、今回のことは本当にありがとう。」

「兄として当然です。お母様が僕たち家族を愛してくれているように僕も家族を愛していますから。」

「あぁ、レイナルド!立派になりましたね」


マリアナがレイナルドを抱きしめ涙している横でレイラとレイアは令嬢達に対抗心を燃やし、調子に乗ってレオンを追いつめてしまっていた事実に気がつかなかった事を激しく悔い、強く反省していた。


一方、アリスとサリアも各々が自分の家族と帰路についていたが2人とも調子に乗りすぎてしまったと反省していた。

相手はまだ5歳の男の子なのだ。しすぎは良くない。

これからゆっくりと時間をかけて仲良くなっていかなくては!と。


王族の2人も少し興味を持ったようだがこの時はまだ『メイザルグ伯爵家の次男は綺麗な男の子だった』程度の認識であった。



・・・・・・・・・・・・



レストランから先に帰路についたレオン


「兄様はさすがだね」

「左様で御座いますね」

「あそこで兄様が入ってくれてなければ令嬢達に失礼な事を言っていたかもしれなかったよ。」

「レオン様もよくあそこまでえられましたね。以前までのレオン様ならすぐに切れ散らかしていたでしょうに。」

「アハハ、違いないね。あ、ネックレス、着けてくれているんだね」


執事服のシャツの中で青い光が生地を通して薄く輝いているのが見えている。


「もちろんで御座います。あるじからいただいたこれは我が家の家宝となる物です。私が死んだ後も代々受け継がれていくでしょう。」

「そんな大袈裟な物じゃないよ。

それとマイケルの主はお父様だからね?」

「フッ、そうですか。そういうことにしておきます。」


他愛もない会話が続く中、馬車は急制動をかけた。


「ケント、どうかしましたか?」


ケントとはマイケルの部下であり、現在御者として馬車を操縦しているメイザルグ伯爵家の使用人である。


「マイケル様、申し訳ございません。急に馬車の前で倒れた者がおりまして。」

「それはいけませんね。メイザルグ伯爵家の馬車が人を轢いたなどと誤解されては困ります。レオン様、様子を見て参りますのでしばしお待ちください。」


「ウッ…これは」

「あちゃー、死にかけてるね」

「レオン様!出てこられては」

「いいよ、それより…」

ぼろ布を巻いただけのような服からは腐敗臭が漂う。

目深に被っているフードを捲ってみると顔の肉が腐っており耳も鼻も腐り落ちていた。

生きているのが不思議なほどだ。

生きながら腐っていく。なんて残酷なんだ。

しかしまだ生きている!


「レオン様、首元をみてください」

「これは?奴隷の首輪?」

「この首輪は闇ギルドが飼っている奴隷商が使う首輪です。」

「闇ギルドってことは違法な奴隷ってこと?」

「左様です。おそらくこの者は奴隷にされてから逃げ出したのでしょう。その隷属れいぞくの首輪が原因で身体が腐っていると思われます。」

「よくもこんな酷い事を…」


ボクは奴隷の子を抱き上げ

「連れ帰って治療する!マイケル!王都のメイザルグ伯爵邸に馬車を急がせて!」




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