第23話 chocolate



バカに苛められている女の子を助けるために近づこうとするも大人が密集していてなかなか進めない。

5歳の体がもどかしいな。


そんな状況をなんとかするべくボクがとった行動は…


ドォォォォォン!!!


庭に瞬間移動して空に向けて雷魔法を撃ち人々の目を逸らせる。


「うわぁ!」

「何事だ!?」

「きゃーーー!!!」

「空が光ったぞ!」


そして女の子の後ろに瞬間移動。

よし!成功だ。


「キミ、大丈夫?」

「え?あ…」


立たせてあげてくしゃくしゃに泣いていた目元をハンカチで拭いてあげる。


「あ、ありがとうございます…」 

「うん。で、あのブローチは大切なモノなの?」

「母がくれた大事なブローチだったんです。でも割れてしまいました…うぅ…」


あぁ、また泣いてしまった。


「おい!貴様!」


ボクは割れてしまった薔薇を模したガラス製の元ブローチを拾い集めて女の子の手に乗せる。

可哀想に、よっぽと大事にしていたんだろう。


「さ、ボクが今から手品を見せてあげる。だから泣かないで?両手で見えないようにブローチを隠して…」


両手で割れたブローチの欠片を持たせてその上下をボクが両手で優しく包む。


女の子は余程悔しかったのだろう。

「あっ…」と出そうになった声を堪えて顔を真っ赤にしている。


「怪我しちゃうから強く握っちゃダメだよ?

じゃあいくよ、3つ数えると不思議な事がおきちゃいます!」

「誰なんだ貴様は!無視するんじゃない!」


お猿さんがうるさいけど気にしない。


「はい、3・2・1…」


復元魔法を女の子の手の中に起動!

よし!綺麗に復元できたぞ。

ガラス製は割れると危ないしまた壊れちゃうかもしれないから圧縮魔鉱石で薄くコーティングしておこう。

続いて錬金魔法を起動してコーティング開始!


手をつないだ男の子が女の子を慰めているように見えているはずだが魔法の発動で手の中からぼんやりと光が漏れている。

「まぁ、何かしら」「何をしているんだ?」「魔法か?」など、チラホラとこちらに注目が集まってきた。

お猿さんもやかましいし。


「さぁ、手を開いてみて?」

「わぁ!ブローチが!母のブローチが!あら?なんだか前よりも綺麗になって?」

「それは可愛いキミへのサービスだよ」

「か、可愛いだなんて」

「おい貴様!俺様を無視して女を口説いてんじゃねぇ!その女は俺様の奴隷になるんだぞ!」


よし、きたぞ!ナイスタイミングだ!

「ほぅ、ウチの寄子の娘を奴隷にするのか?」

騒ぎを知ったジィジが近くまで来ていたんだよ。


「なんだこのクソジ…ジ…イ?ここここ侯爵様ぁぁぁぁ!!!???」


バカな小猿が振り向くとジィジが珍しく『侯爵様』に変身し、威厳を感じさせるオーラを放ちながら小猿を見下ろしていた。

「このシュナイゼル=キャラバンをクソジジイと申したか!小猿がぁぁぁ!!!」

「ヒィィィ!!!」


よし!いまだ!!

透視と念動力発動!

さぁ、このスイッチを入れればお猿さんはもう後戻りできないぞぉ。

スイッチ、オン!!


「あ!?ああああああああ!!!

み、見るな!見るなぁぁぁ!!!」


ボクの暗躍でズボンの股下をびっちゃびちゃに濡らし泣き叫んでいる小猿。

ふふふ、それは出し切るまで止まらんのだよ。踏ん張っておかないと後ろからも出ちゃうぞぉ?


ブリッ!ブリブリブバババ!!!


あ、やりやがった…

前と後ろを押さえながらビチャッと尻餅をついてしまう小猿。


「何なんだこの小猿は!!前からも後ろからも漏らしおったぞ!この情けないヤツめ!!こいつはどこの者だ!え?くさっ!くっっっさ!!!誰か!誰かおらぬか!この下品な猿を地下牢にぶち込んでおけ!!」


「お祖父様、彼女を救ってくれたんですね?さすがです!!」


良い仕事をしたジィジにはご褒美をあげないとね。

孫に格好いいとこを見せたという形になってしまったジィジは

「おぉ!レオンよ!レイナルドのお披露目パーティーで騒ぎを起こしてるバカを叱ってやろうと思ってきたんだが、婦女子を庇っていたのはお前だったのか!偉いぞぉ!」

と、ボクを抱き上げご満悦である。


「レオン?」

「レオンってあの!?」

「嘘!?あれがあの?」

「メイザルグ家のオー…」

「バカ!口を慎め!」

「あんな綺麗な子だったか?」


あちゃー、逆に変に目立っちゃったかー。

あ、助けた女の子が「え?嘘?」とか言いながらぼーっとしてる。


ジィジのジョリジョリ攻撃から解放されたので女の子のフォローをしておく。

「お祖父様、彼女はさっきのお漏らし君から脅されていました。シャラークセ伯爵にはきっちりとお仕置きしておいてくださいね!二度と彼女に関わらないようにもお願いします。」

「うむ、しっかりとやっておこう。」

「はい!良かったね」

「レオン様、ありがとうございます。ブローチの事も本当にありがとうございます!あの、でも、どうやって直したんですか?」

「それは内緒、秘密にしておいてね?」

「はい、秘密にします!2人だけの秘密…ウフフフ♪」

「じゃあ目を閉じて。次は違う手品だよ?」

「え?あ、は、はい」ドキドキ

「口を開けて~」

何をされるのかわからず不安になって少しプルプルと震えながら「こう、ですか?」と軽く開けた彼女の口に軽いくちどけが売りの苺味のチョコを放り込む。

「ん!」

「これは秘密を守ってくれるキミへの報酬だよ?ゆっくり味わってね♪」

頬に両手をあててムグムグと咀嚼している女の子。

あまりの美味しさに目をトロンとさせて全身をクネクネさせている。

そんな時、後ろからボクの服を引っ張る存在が…

「むー!」

「むぅーー!!」

と頬を膨らませ怒ってます!拗ねてます!とアピールしてくる姉ーず。

可愛いなぁ。

「はいはい、お姉様達もどうぞ」

と苺チョコを手渡ししようとすると

「違うの!」

「違うでしょ!」

なんて手の掛かる人達だろう。

可愛いが過ぎるよ。

「はい、目を閉じて口を開けて~」

フランス人形のような愛らしい2人が目を閉じて口を開けて「早く、早く!」とおねだりしている。

唐辛子とか入れたらどうなるんだろう…などとイタズラ心が顔をのぞかせてくるがグッと堪えて苺チョコを口に入れてあげる。

姉ーずのお土産のつもりで買ってきたんだけど何かとバタバタしていたのでまだ食べさせてあげれていなかったからいいタイミングだったかな。


「レオーーン!!何!?何なのこれは!!?」

「こんな…このような物を今まで内緒に…1人で楽しんでいたと言うの!?」

「「ずるい(です)!!」」

「い、いや、あの…ね?」

「レオン様、このような高級なお菓子は食べた事ないです!」

「おいしかった?」

「それはもう!」

「それじゃあちゃんと約束は守るんだよ?そうすればまた会った時に食べさせてあげるからね?」

「ま、また会っていただけるのですか!わ、私とレオン様が2人っきりで…ウフ、ウフフフ♪」

「そういえばまだ名前を聞いてなかったね。ボクはレオン=メイザルグ、5歳だよ。よろしくね♪」ニコッ

「わ!私は!サリア、コテージュ男爵家サリア=コテージュ9歳です!」


ありゃ、4つも年上だったのね。

おっと、姉ーずがボクを隠すように前に出た?

「「盛りのついたメスネコのようね」」

「レイア=メイザルグ7歳」

「レイラ=メイザルグ7歳」

「「レオンは私達が守る!」」

「「でもレオン、

この子の目が怖いわ」」


敵意のある人から守ってくださいね?

そして姉ーずもたまに同じ目をしてます。


「ワタクシは公爵家のアリス、アリス=クィントです。レオン君、お久しぶりですね?

二年前も可愛いかったけど5歳になってマリアナ様の面影がより際立ってきてとても美人になりましたね」


え?

なんか呼んでもないのに出てきた人が…




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