第21話 マウント



脳キンとジィジのバトル、母の発作、姉ーずの錯乱。

到着早々騒がしかったがアイリス姉様(母の姉)とレイサル叔父さんのわざとらしいまったりとした空気でなんとか落ち着いたようだ。




夕食後、お婆様とお母様、姉ーずとボクはお茶を飲んでいた。


「マリアナ、明日のアクセサリーは用意できているのかしら?」

「お母様、勿論用意してありますわ。」

「あなたはメイザルグ伯爵夫人であると同時にキャラバン侯爵家の人間でもあるのです。街で売られているような宝石では許しませんよ。」

「そのような見窄みずぼらしい物を用意するわけないではありませんか。」

「そうですか、念の為と思ってあなたの宝石も用意してあるのですが一度見てみますか?」

「そうですね、見るだけ見てみましょうか」


あー、この流れ…


「ふーん、この程度の物なら遠慮させてもらいますわ」


言い方!!


「では、あなたが用意した物を見せてみなさい?」

「明日の為に秘密にして驚かせようと思ってましたのに。仕方ありませんね。

マイケル、ネックレスを持ってきてちょうだい。」


パーティーやお茶会など社交界によく顔を出すお母様のネックレスは魔鉱石のトップを取り外し可能にしてあり普段使いの時はシンプルなチェーン、社交界に出向く時は豪華な物と、取り替えられるようにしてある。

マイケルが今取りにいったのは豪華なネックレスだ。


「奥様」

「ありがとう。」

戻ってきたマイケルが持ってきた箱は見た目を豪華に改良された個人認証付き宝石箱。

勿論他の家族の箱も改良してある。

本人とマイケル、あとは一部の使用人以外は持ち上げることすら不可能な安全設計である。


宝石箱を開け中身が見えるようになる。

「たしかに豪華ですね、ですがメインとなる宝石が無いではないですか。」


お婆様の事を無視して服の中に見えないように着けていたネックレスをはずしトップを付け替えようとしていると

「まぁ!!少しお待ちなさい!

何ですか?何なのですか!?」

圧縮魔鉱石を目にしたお婆様は大混乱である。

椅子から立ち上がり足早にお母様に詰め寄るお婆様。

「す、少し良いかしら?」

「見るだけなら大丈夫ですがれないように気をつけてください。防御魔法が発動してしまいます」

魔鉱石は登録者以外がさわるとシールドが展開されて触れた者を弾き飛ばしてしまうのだ。

仮になんとかして宝石箱を持ち運びできたとしても魔鉱石本体にさわれるのは本人と身内だけという盗難防止対策なのだ。

当然製作者のボクと家族はノーカンである。


「何なのですかこの大きな宝石は!こんな…美しい…」


お婆様は絶句し固まってしまった。

それくらい驚いてもらえると苦労した甲斐がある。


お母様がトップの付け替えを終えると

「レオン、着けちょうだい」

「はい、お母様」

「あぁ、レオンからの愛を感じるわ…やはりレックスは捨て」

「お母様、家族なので。」

「もう、レオンは意地悪なのね」

「そんな可愛く言ってもダメですよ?」

「ウフフ。さ、これで納得できましたか?」


豪華版ネックレスを装着したお母様、お婆様はまだ放心している。


「何を騒いでいるの?」


またややこしいのが来たか。


「え?ちょっとマリアナ、それは何なのかしら?」

「これは愛しい人からの贈り物で愛の結晶なのです。」

「マリアナお姉様!スゴく綺麗なのです!」


アイリス叔母様とシャルネーゼちゃんの乱入である。

そしてシャルネーゼちゃん、しっかり矯正されててワロス。


「「チッ」」


姉ーずが間髪入れずに舌打ちしております。なんでそんなに嫌いかなぁ、シャルネーゼちゃん可愛いのに。


ア「レックスに言えば私の分も用意してくれるかしら」

シ「シャルも欲しいのです!」

マ「レックス…ね、に言っても無駄よ?そんな甲斐性もこのような美に対するセンスも無いもの。」

「「ふふん、チビには手の届かない愛なのよ」」

と姉ーずが服の内から外側へネックレスをだしてみせびらかしながらドヤ顔している。

ア「そっちの2人まで持っているの!?」

「「愛なので」」


家族的な愛です、家族愛。


ア「いったいどこの商人から手に入れたの?」

マ「姉様、商人が売っているような安っぽい石ころと同じに思わないで?」

ア「ではどうやって…」


おい、やめろ。

そこ3人、こっち見んなし。


「む、難しい話のようなのでボクはこれで…」

「リォーン!どこへ行くのです?」


発音!

そして鼻の穴が広がってます。


「いや、お風呂に」

「「私達も行くわ。一緒しよ?」」

「いや、トイレの間違いでした」

「「大丈夫、一緒しよ?」」

「シャルも行くのです!」


トイレっつってんだろ!

大丈夫って何!?

シャルネーゼちゃんも!

姉ーずが睨んでるから!


ア「ふぅん、レオンが…ねぇ」

マ「レオン、言ってあげなさい。この宝石は愛する家族の為に用意したと!そして部外者はその資格が無いと!」


あぁあ、言っちゃった。

そして部外者とか言ってるし。


「この美しい魔導具を?5歳のレオンが?どうやって!?」


あ、バァバが復活した。

そして魔導具言うな

ア「魔導具!?これが?」


ほらぁ…


「旅の行商人から仕入れた物をボクが加工したんですよ。その辺の才能があるみたいです?」

ア「どうして疑問形なのかしら?

ねぇレオン?お姉様には無いのかしら?ねぇえん♪」


座っているボクの後ろから抱きついて耳元で囁きながらアチコチを優しく撫でてくるアイリス叔母様。

やめろ、大人の色気で迫るのはやめろ。

見た目は5歳の幼気いたいけな少年だが中身は現世含めるとアラサーなんだ。

中の人が喜んでしまうじゃないか。


マ「姉様、みっともないですよ。」

「「やらしい感じで触らないで!」」

ア「あらぁ、レオンは嫌がってないみたいよぉ?ウフフフ♪」


嫌じゃないです。

むしろ反対向きたいです。


「シャルもレオンお兄ちゃまのが…欲しいです…」

「私もレオンの…欲しいな?」


なんかえちぃ言葉に聞こえるのはボクだけだろうか?


「私も…」


いや、バァバのはいらないです。

そこに需要はないです。

いくら中の人がアラサーでもアラフィフは無理です。


「ハァ…わかりました」


どうせ渡そうと思ってたんだけど今じゃ無かったんだよなぁ。

どうせ今渡しちゃうと明日のパーティーで着けちゃうでしょ?

それだとメイザルグ伯爵家のインパクトが薄れちゃうからパーティーが終わって帰る時にって思ってたんだよ。

キャラバン侯爵家も大事な家族だからね。


結局、お婆様と叔母様、シャルネーゼちゃんには条件付きで夜の内に渡す事になった。

明日のパーティーではつけない事。

出所でどころをボクとわからないように誤魔化す事。

出所がボクとわかったら後々面倒くさそうだからね。


血の個人認証をしている時に

「このような宝を孫から貰えるなんて私は幸せ者ですね」

美魔女バァバはニッコニコであった。


「ねぇ、そのレオンの針でお姉さんのどこを刺したいのぉ?ねぇえ?」

いちいち言い方がえちぃ叔母様。

中の人に効くからやめていただきたい。


「シャルは嬉しいです!着けてください!」

「はいはい」

「これは結納品としてうけとります。責任をとってもらわないといけませんね?セバス!契約書を作成します!紙とペンを!

シャルは大きくなったらレオンお兄ちゃまと結婚するのです!」

せっかく可愛い事を言っているように聞こえるのに合間あいまに責任とか結納とか契約書とかのくっそ重い不穏な言葉が早口で聞こえたような?

まさか…ね?

そして小さな子供の言っている可愛い戯れ言なのに姉ーずが血の涙を流しそうな勢いで睨んでいる件。


そして翌日。

パーティーは始まる。



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