第20話 キャラバン侯爵家



馬車で3日、王都にあるお母様の実家となる侯爵邸に到着したメイザルグ伯爵一家。


「おぉ!よく来たな!

マリアナよ、変わりはないか?」

「はい、お父様。レックスの働きにより我がメイザルグ伯爵領はこれまでより繁栄しております。」


この声のデカい人はお母様の父、

つまりボクのお祖父様だ。

シュナイゼル=キャラバン侯爵

51歳

娘と孫を愛する子煩悩な良い人だ。

その反面、愛娘を奪った脳キンを疎ましく思っている。


「お義理父様とうさま、会議以来なので三週間ぶりですね。」

「……。おぉ!レイナルドよ!

魔法の才能が開花したと聞いたぞ!これで我が娘の領地は安泰だ!」


お父様は無視かよw

お祖父様…相変わらずお父様には塩対応だ。


「お祖父様、お招きありがとうございます。変わりなくお元気そうで何よりです」ニコッ


イケメンスマイルにジィジもデレデレだ。

お兄様と姉ーずが血縁関係に無い事は当然侯爵家の皆さんは知っている。

だが決しておかしな態度をとらずに本当の孫として、お母様の息子・娘として接してくれている。

本当に良い人達なのだ。

だからボクもこの侯爵家はメイザルグ家同様大好きである。

ジィジに問題はあるけどね…。

お父様拗ねてるし。


「レイラにレイアも前に会ったときよりもさらに綺麗になったな!ワシも嬉しいぞ!そろそろ婚約者を探してみるか?」

「「結構です。」」

「わははは!そうかそうか!お前たち2人に見合うような男はおらんわな!わはははは!

して?そちらのマリアナによく似た娘は誰かな?」


ジィジよ、あなたもか。

しかも娘って…


「さ、こんな孫の顔もわからないようなボケ爺ぃはほっといて中に入りましょう。」

「なっ!?ぼ、ボケ爺ぃ…」


お母様も攻撃するときは容赦ないなぁ。

まあ、ざまぁという事で。



「ほんっとうに!すまんかった!!まさかあのぽっちゃりレオンが元に戻ってるなんて誰にもわかりゃせんぞ!?」

「お義理父様とうさま。孫の顔もわからないとは…あなたの愛とはその程度のモノなのですね。可哀想なレオン…残念です」

「ぐぬぅ!!黙れ!小童こわっぱが!!

何がお義理父様だ!貴様なんぞ息子に持った覚えは無いわ!」

「左様でございますか。

では皆、他人の家に間違ってきてしまったようだ。帰るぞ!」

「ま、待て!貴様が1人で帰ればよいではないか!」

「他人の侯爵様がなんか言ってるけどどうするぅ?」

「き、貴様ぁぁぁ!!」


この脳キン…自分の事は棚の上に置いてここぞとばかりにいつもの仕返しをしてるな。


「レオン、こんな孫の顔も忘れてしまうような!な人でもマリアナの身内…そして相手は薄情!な人でも侯爵様なんだ、逆らう事すらできない無力な父を許しておくれぇぇぇ…」ニヤリ


わざとらしく泣き真似をしつつボクを抱きしめる脳キン。


「レックス、そろそろ許してあげて?この人も悪気があったわけじゃないのよ?」

「おぉ、セイラよ!よく言ってくれた!やーい!怒られてやんのー!プークスクス」

「ぐぬぬぅ!」


おいジジィ…歳いくつなんだよ


助け船を出したのはお母様の母、

セイラお婆様だ。

48歳だが30代前半に見える美魔女である。


「「セイラちゃん!来たよ!」」

お婆様に抱きつく姉ーず。

お婆様の事が大好きなんだよなぁ。

お婆様も「お婆様」と呼ばれるのが嫌いで身内だけの時はセイラちゃんと呼ぶように厳命しているのだ。


「セイラお姉様、今回はわざわざボクなんかのためにありがとうございます。」ニコッ

ちなみにメンズには「お姉様」呼びを厳命している。

「まぁ、相変わらずイケメンねぇ♪」

「お母様、アイリス姉様は?」

「小用で外出しているだけだからもう戻るでしょう。」


アイリスとはお母様の姉で31歳、

アイリス叔母様の旦那には婿養子となる子爵家次男だったレイサル31歳。

子爵の子が侯爵令嬢と結婚とか大出世と思われがちだけどこの子爵家が侯爵家の金づるなので、言わば人質のような存在らしい。

本人達は幼なじみでそんな裏話には一切の興味がなく恋愛結婚だと言っているのである意味winwinではないだろうか。

そしてこのレイサル叔父さんは侯爵になる事はなく息子のリカルドが次期侯爵となる予定らしい。


そのリカルドは16歳、

リカルドの妹に歳の離れたシャルネーゼ4歳と

4人家族となり侯爵邸で同居しているのだ。


「ただいま戻りましたー!」

「おー、シャルちゃんおかえりぃ」

「あ!マリアナ

もうきてたんですね♪」

「おい!シャル!」


無邪気なシャルネーゼちゃんにそれを止めようとするリカルド兄様…

『親愛なるちちよ、大いなる自然ははよ、我にその力の一端をお貸しください、いかずちにて我が敵を殲滅せよ!サンダーボル…』

「お母様!!

何を詠唱しているのですか!」


兄様が止めてくれた。

あっぶねー、慌ててシャルネーゼちゃんを庇うように抱きかかえたけど…

もし直撃してたらボクは大丈夫でも魔力抵抗の弱いシャルネーゼちゃんは何かしらの怪我をしていたかもしれない。


「あらやだ、シャルちゃんがおかしな単語を口走ったから我を忘れてしまったわ。」


叔母様呼びが気に入らなかったらしい。あんたら親子揃って…


「マリアナお姉様、シャルネーゼが申し訳ございません。よく言い聞かせておきますので。」

「あらリカルド、成長したわねぇ。

発作のようなものだから気にしないで?」


気にしますよね!?

発作で済ます母よ、それでいいの?


シャルネーゼちゃんは抱っこしてるボクの腕の中で震え…

あれ?震えてないね。

震えてないどころかなんかむっちゃ匂い嗅がれてるんですけど!?


「シャルネーゼ!」

「そろそろレオンから離れなさい!」


姉ーずがお怒り!?


「ヤ!」

さらに抱き付いてくるシャルネーゼに怒りで体をプルプルさせている姉ーず。

「お姉様、小さい子ですから。」

「「そ、そうだけど!」」

「あ!今笑ったわよ!」

「ニヤッて笑った!」

「レオンお兄ちゃま、そこの(ブス)2人が怖いですー」


お兄ちゃま…レオンお兄ちゃまかぁ。

デヘヘ…


「レ、レオン!今その子が」

「私達のことブスって…

小さい声でブスって!」

「こんな可愛い小さい子がそんな事言うはずないじゃないですか、お姉様2人は年上なんだから優しくしてあげてくださいね?」

「あああ!!」

「またニヤッて笑った!笑ってるから!」


ボクがシャルネーゼちゃんの顔を覗き込むと今にも泣きそうな顔をしており…


「お姉様?そんな事言って意地悪しちゃダメですよ?メッ!

もう大丈夫だよ?ちゃんと怒っておいたからね?」

「ほんとう?」ウルウル

「大丈夫、ボクが一緒にいてあげるから、ね?」

「「あああああ!!!!」」


シャルネーゼちゃんの頭をヨシヨシしていると姉ーずが叫びながら膝から崩れ落ちていた。


「あらあらあら、何なのかしらこの状態は?」

「いやー、何だろうねぇ」


アイリス姉様(母の姉)とレイサル叔父さん、もっと早く出てくるべきでは?

玄関で見てましたよね?





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