第17話 伯爵家のアレやコレや


「レオン!急ぐのです!!」

「「レオン君!早く!!」」

「ハハハ、いってらっしゃい」

「お、俺は?」


パーティーを数日後に控えたここにきてまたもや問題発生である。



・・・・・・・・・・・・



朝食後、1人のメイドが遠慮ぎみにお母様に話しかけてきた。


「奥様、失礼します。お時間宜しいでしょうか?」

「あら、マイケルを通さずにあなたが直接来るなんて珍しいわね。どうかしたのかしら?」

「実は……」

「何ですってぇ!!!大変!!

マイケゥ!マイキェウ!!」

「お呼びでしょうか奥様。」

「すぐに馬車の用意を!!あと先日の服飾店にサイズ直しの準備をするように伝えるのです!!」


この母はなぜ急にネイティブな発音になるのか…。


「あと、わたくしの仕事はレックスにやらせておいて!」

「何だ…と!何故俺がマリアナの仕事をせねばならんのだ!?

俺にもせねばならん仕事があるのだぞ!」

「元々はあなたの仕事なんですけど?」


お父様は政治向きの仕事はからっきしダメな脳キンなのである。


「ぐぬぬ!できるわけがなかろう!」

「難色を示し後日にまわすのです!それくらいできるでしょう!」


そして今、ボクと姉ーず、母様を乗せた馬車は走り出した。


「あのぉ、なぜボクは馬車に乗って街に向かっているのでしょうか?」

「あなたがそんなにも愛らしく変身したからですよ」

「レオン君が痩せちゃったから」

「先日買った服がブカブカでしょ?」


おお!一つの文章を2人で分けて話しただと!?

これがツインズのお家芸か!


「それと…ネックレスを貰ってからレックスがあなたにベッタリで静かにお話出来なかったでしょう?」


そうなのだ。

ブルーサファイアカラーのネックレスを装着したお父様が昨日

一日中仕事もせずにボクにくっついて離れなかったのだ。


「どうだ?似合っているか?」

「やはりこのネックレスにはこっちの服がよいかな?」

「これとこれ、どっちが似合う?」


女子かよ!


ほぼ1日、お父様のファッションショーに付き合わされる羽目になったのだ。


喜んでくれているのはわかるしボクも嬉しいんだけどさぁ…


「それで?あのバッグはなんなのですか?」

「どのバッグのことでしょう?」

「この母相手にたばかれると思っているの?正直におっしゃい。それともあのバッグの中からネックレスの木箱が6つも出てきたのは夢だったと?」

「はは、お母様には敵いませんね。あれはマジックバッグです。」

「端的に聞きます。もう一つ用意出来ますか?」

「お母様が望むのであれば。」

「容量は?」

「好きなだけ。」

「……わかりました。では1つお願いします。」

「デザインはどうしますか?」

「選択肢があるのですか?」

「お好きなモノを持ってきていただければ助かります。」

「屋敷に戻ったら預けましょう。」


あー、これはもうバレてるかな。

そりゃそうか、5歳の子供がいきなり今まで見たことも聞いたこともない魔導具を複数持ってきてプレゼントしたんだ。

勘ぐらない方がおかしい。


「それで、ボクの衣装なんですが」

「どうしました?」

「魔法で直せるので」

「それはダメね 。領民の仕事を奪う事になるわ。」

「わかりました。領主というのも気を使うのですね。」

「ふふ、権力というのはそういうものよ。」


こうしてサイズ直しを終えたボクたちは街で昼食をとり

屋敷に戻った。



・・・・・・・・・・・・



時は遡り数週間前


はぁ、今日は私がオークちゃんの当番かぁ。

伯爵家にメイドとして来てから四年、イジメというほどの事は無かったにしろあのちゃんには悪戯いたずらされて困ってしまうんですけど。

子供の悪戯だからエッチな悪戯がないからまだいいんだけど、

これでも一応私だってお年頃の女の子なわけなのですよ。

きっと私の見た目が可愛いのがいけないの。可愛い子にちょっかいをかけたくなる男子特有のよね、きっと。

でもごめんなさい?私はレイナルド様のようなスマートな体型が好みなの。

あの5歳児にあるまじきたるんだお腹、芋虫を連想させる指、首が見えなくなるほどの顎下あごしたのお肉…

思い出しただけで寒気がするわ。

極めつけはあの顔!

何かを頬張っているようなパンパンの頬、その頬肉ほほにくに押し上げられ変形した細い目、あの細い目に見られると睨まれてるように感じるのよね…。

ハア、憂鬱だわ。


「マキナ、今日はあなたがレオン様の当番だったわよね?」

「はい、そうです」

「それそろ起こしにいかなきゃダメなんじゃない?」

「あ!もうこんな時間!?

カエラ先輩!ありがとうございます!行って来ますー。」



レオンの部屋


あー、またこんなに散らかしてー。

わざと?わざとなの?

片付ける身にもなってくださいよ。


せわしなく散乱している本や衣類を片付けていると視線を感じた。

あら、珍しく1人で起きたのね。

起きたなら声をかけて欲しいわ。

いくら私が可愛いからって見つめないでよ。

ああ、私のこの可愛さはなんて罪深いのかしら。

それに仕事をじぃっと見られてるのは見張られているようで嫌なの。

はっ!まさかメイド姿の麗しい女の子に興奮してしまったのかしら!?

男性は朝になると、その、股間がお元気になられると聞いているしもしかして私の可愛い後ろ姿に欲情しちゃったの!?


あ、伸びをしてる…


「レオン様、お目覚めになられたのですか?珍しく1人で起きられたようですね。」


少し嫌味だったかな?

でもいつもみたいに黙って着替えて出て行くんでしょ?


「うん、おはよう」

「……え?」

「うん?」

「レ…レレ…レオン様が挨拶したぁぁっ!!」




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