第16話 指の数だけ




マイケルにネックレスを渡した次はお母様に。

プレゼントは女性からって思ったんだよね。

お兄様から渡したりしたらきっと後で何か言われる。「母である私はレイナルドの次なのですか?」とか絶対言われる。

なのでお母様、姉ーず、お兄様の順番で配っていき個人認証を済ませた。


お母様に渡したネックレスはパーティーなどに参加する事を考えて一際豪華に見えるようなデザインにしておいた。


「お母様の瞳の美しさを再現してみました」

魔鉱石の色はアメジストを意識した透明度の高い紫色で形は楕円形にした。

ネックレス部分も白金で細かい装飾を施しているがあくまでも主役は魔鉱石といったデザインだ。

カット面もより細かく何度も何度も試行錯誤して完成した自信作でキラキラと光り輝いている。


「まああああ!まあああああ!

こんなにも美しい宝石は初めて見ましたよ!これをわたくしに…

レックス、離婚してください。

私はレオンと結婚します。」

「おぃぃぃぃ!!!」

驚愕のあまり叫び出す脳キン。


「お母様、喜んでくれて嬉しいです。ですが結婚は出来ませんのでこれまで通り、家族として愛してください。」


「マ゛リ゛ア゛ナ゛ァァァ」


いや、泣くなよ…

いい歳したオッサンがNTRされて泣く姿はとてもみっともないと思いました。


「冗談ですわ。」スンッ


母よ、あなたの目は冗談に見えません。脳キンがカワイソス…


「さ、あちらで試してみてください。魔力の補充はのうき…お父様でも出来ますのでにお願いしてくださいね。」


「納期?農期がどうしたというのだ?」


その鈍感ぶり、

だから脳キンと言われるのですよ…

主にボクから。


次に姉ーず

姉ーずの分はハート型の色違いにしておいた。

レイアはガーネットの赤、

レイラはトパーズの黄色。


「この血のように美しい宝石は私にぴったりね?

あ、血が足りないんじゃないかしら?マイケル!ナイフを!」

「一滴でいいですから。」


こいつがレイアだぁ!


「こんな可愛い色の宝石見たことないわ、形も可愛い!レオン君ありがとう♪」


双子なのにどうすればここまでいびつに違いがでるんだろう…


そして兄様の分

男性陣は全員ブルー系に揃えた。

マイケルが暗く濃いラピスラズリ、

兄様が爽やかに淡いムーンストーン、

これはカットのない磨き上げられたツルンとした楕円形だ。

脳キンがブルーサファイア。

濃いめの青で正四角形に形成したのち大きめのカットを丁寧に施した。

細かいカットとは違った輝きかたをしていて野性的な魅力を感じる自信作だ。


「ありがとう、大事にするよ」ニコッ

「はい!

兄様ならすぐに使いこなせますよ!

それでは皆、ちゃんと練習しておいてくださいね」

「ちょおっと待ったー!!」

「…お父様?まだいらしたんですか」

「お、俺のは?」

「何がですか?」

「うぉぉぉぉん!!息子が!息子が意地悪するぅぅぅ!!!マリアナァァァ!うわーーーーん!!」

「お父様の息子はレイナルド兄様だけですよ?ボクなんて数週間居なかっただけで父親に忘れられちゃうモブですから。」

「そ、それは!だが!!

モブってなんだ?」

「レックス!男らしくないですよ?それでも王国最強と言われるメイザルグ伯爵ですか?情けない。」

「「ハァ…」」


母の塩対応に娘2人の無言のジト目。

これは相当こたえただろう。


「ほらほら、皆も意地悪しないで。」

「レイナルドぉぉぉ!!!」(号泣

「ハァ…仕方ないお父様ですね。

さ、手を出して」

「ん、んむ…ん?そこじゃな…

ギャアアアアアア!!!!」

「ああ、ゴメンナサイ、ボーッとしてました。」


マイケルに借りた細い針を指と爪の間に突き刺した。

ついでにグリグリもしておいた。

きっとこの針の正しい使い道はこれだろう。

その証拠にマイケルが不敵な笑みを浮かべている。


「なんで俺の時だけボーッとしちゃうかな!?ま、待て!無表情で違う指を持つんじゃあない!」

「何ですかお父様、5歳の子供のちょっとした可愛いミスじゃないですか。今度はチャントヤリマスー。」

「待て!待つのだ!!その針をこっちによこしなさい!自分で!自分で刺すからぁ!」

プスッ!グリグリグリ…

「アッギャアアアアア!!!」

「ああ、ゴメンナサイ、疲れて目が霞んじゃって、ハハハ」

「ハァハァ…針、針をよこすんだ…」

「大丈夫ですよ、指はあと八本もありますから。」

「回復!先に回復魔法かけて!

おい!マイケル!何を新たな針を渡そうとしている!?」

「お父様、あんまり暴れると危ないですよ?」

「暴れてないのに刺したよね!?

危なくなくてもあと八本も刺そうとしてるよね!?」

「あ、そうか!足の指か!」

マイケルに耳打ちされた兄様が何も考えずに呟いた。


「レイナルドぉぉぉ!!!

なんでそんな事を言っちゃうのぉぉぉ!!」


脳キンはキャラ崩壊をおこしてしまった。


マイケルと兄様に売られた脳キンが不憫に思えてきたので脳キン専用のネックレスを取り出す。

「さ、お父様、これを見れば元気がでると思いますよ」

「なんか皆の時と順番違くね!?

先にそっちだよね!?」


どんどん崩れていく脳キン。

違くね!?ってなんだよ…

日本の高校生か?


木箱をパカッと開けると父様専用で存在感マシマシのネックレスが輝いていた。


「おぉぉぉ!!!これはなんと言葉にすれば良いのかわからぬほど猛々しさを感じる美しさだ!

まさにこのレックス=メイザルグの胸元を飾るに相応しいぞ!!」

「お父様の勇猛果敢な姿を想像して作ったんです。

が…なんだかお父様が想像と違ったようなのでもっと可愛いのに作り直しますね。」

「ま、待つのだ!!このままで!

これでおなしゃーっす!!」


だから高校生かって!


「はい、じゃあ血を」

「さっき刺したじゃん!!

何回もプスプスグリグリって!!

その血はどうしたんだよ!?」

「あー、血は新鮮なモノじゃないと魔力が抜けちゃうんで早く指を出してくださいねー。はーい、チクッとしますよー。」


ふぅ、やっと配り終えた。

しかし…楽しいな


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