第15話 圧縮魔鉱石+3



部屋に戻ったボクは異次元収納からバッグを取り出した。


事前に作成しておいたマジックバッグだ。

異次元収納が付与されたこのバッグは呼び方は様々あるらしいが

ややこしくなるのでマジックバッグに統一しておこう。

この世界にも一応このバッグは存在していて遺跡系ダンジョンの宝箱から発見されたりするらしいが買うとなるとかなり高額になるとか。


次元魔法が使えるボクは付与魔法を使えば自作できるわけだ。 


ここにきて問題は家族にボクの魔法をどう説明するのかということ。


黙っていても良かったんだけど愛する人達には危険を回避できる力をもっていて欲しいのでシールドの魔導具は渡しておきたい。

なので求められればある程度ごまかしつつ説明しても良いかと結論づけた。


・・・・・・・・


マジックバッグをもってダイニングに戻るとお父様がまだ口撃こうげきされていた。


「お待たせしました。まずはお見せするのでそのまま座っておいてくださいね」


すでに食器などが片付けられたらテーブルにマジックバッグから取り出した家紋の刻印された木箱を1つ置く。


「まずは説明からしていきますね。」


木箱を開け中に入っているネックレスを取り出して皆に見えるようにする。

取り出したネックレスを見た皆の反応はそれぞれ。


「「「まあ!!!」」」


テンション爆上がりの女性陣

この時点ではこのアクセサリーの出所とか疑問は浮かんでいないようだ。


「おぉ!!」


初めて見るアクセサリーに驚くお父様。


「………。」


黙ってボクからの説明を待っている兄様。

一番冷静なのが11歳の子供な件。


取り出したのは菱形ひしがたに形成された魔鉱石にさらにカットを施した深い青色の魔鉱石。

マイケル専用に考えた渋いデザインだ。

大きさは縦10cm横7cmくらい。

宝石と考えるとかなり大きい。

シャンデリアの光を吸収して複雑なカット面から屈折した光が漏れ出る様は美しく光り輝いており神々しささえ感じられる。


「まずこちらはボクが作ったアクセサリーです。」

「待て!少し待ってくれ。作ったと言ったか?」

「「お父様!ハウス!!」」

「なっ!?」


待ったをかけるパパ上様に突っ込む姉ーず。

イッヌ扱いかよ。


「……。よろしいですか?次にボクの許しを得ず口を開いた人は退場ですよ?そしてこのプレゼントはあげません。」

「ぐぬぅ…」


「はい、では続けますね。

このトップに使われている宝石には装着者の身を守るチカラがあります。

なので寝る時以外は外さずにいて欲しいのです。

勿論寝るときもつけていても構いません。

皆の分を用意してあるんですがネックレスのチカラが発動するのはボクから受け取った人だけ、つまりは専用装備ということです。

それじゃマイケル、血をください。」

「血!?」

「はい、お父様アウトー。」

「いや、ち、違う!喋ってなどないぞ!?それとアウトってなんだ?」

「ハァ…まあいいです。その人専用にする為に宝石に個人を記憶させる必要があるから最初に血を一滴垂らす必要性があるんです。」


全部の魔鉱石が出来上がったあとから思いついた事なんだけど個人認証システム欲しいなぁと。

なので現在の魔鉱石は圧縮魔鉱石+3にグレードアップしてあるのだ。

刻印できる魔法陣は4つ。


「じゃあマイケル、ナイフを持ってきてくれる?」

「こちらをどうぞ。」

執事服の内側からスッと短剣を取り出し渡してくるんだが

これどう見ても投げナイフだよね!?

「いや、まあいいや。指を出して?チクッとするけどすぐに回復魔法かけるから。」

「レオン様、お待ちください。」

「どうかした?」

わたくしめのような使用人にそのような貴重なものは相応ふさわしくありません。」

「でも修行についてきた2人のメイドはすぐに受け取ってくれたよ?」

「なん…ですと?

マキナ、カエラ、後で話があります。」

「怒っちゃダメだよ?2人は試験に付き合ってくれたんだから。」

「かしこまりました。

2人は下がりなさい。」


「じゃあ続けるね?」

マイケルの指先をナイフの先端で少し突くと血の玉がプクーっと膨らんでくる。

それを圧縮魔鉱石に押し付けると魔法陣が浮き出してぼんやりと光りだした。


「はい、これでこのネックレスはマイケルにしか反応しなくなったよ。」

「レオン様、有り難き幸せにございます」


マイケルと少し距離を置き説明を続ける。


「じゃあネックレスを着けて宝石を意識して魔力を流してみて?」


マイケルが魔力を流すと一瞬で透明な結界シールドが展開された。


「マイケル、そのまま動かないでね。あまり動くとシールドが解除されちゃうから。」


マイケルがコクリと頷いた瞬間にボクはナイフをマイケルに向けて投擲。


父様は「おい!」と焦る。

母様は「キャア!」と悲鳴をあげる。

兄様は冷静に見守っている。

姉ーずは沈黙を守っているが片方の姉が口元をニヤリと歪ませていた。

サイコパスがいる!どっちだ!?


投げられたナイフはマイケルの50cm手前で音も無く弾かれて絨毯の上に落ちた。


「こんな感じかな。物理攻撃も魔法攻撃も弾くけど展開中は動けないからもしもの時はこのシールドを展開して助けを待ってください。

マイケル、そのシールドはマイケルの意志でサイズの変更ができるから後で練習しておけばいいよ。

シールドの展開も何回かやってれば意識するだけで展開できるようになるから。」

「これはすごいですね。

こんな魔導具は聞いた事がありません。さすがレオン様です。」

「ふふ、ありがとう♪シールドに使われる魔力はその宝石に貯蔵されている魔力を使うんだけど

連続展開30分くらいで魔力は無くなるので気をつけてね。

魔力の残量は宝石の色がどんどん薄くなっていくよ。透明になったらからってこと。

身につけておけば宝石が勝手に魔力を補充するんだけど定期的に自分で魔力を込めたほうがいいかもね。

説明は終わりだよ。じゃあ配っていくね。」


何やら思うところがあるのかお父様とお兄様の顔色は悪い。

お母様は呆気にとられている。

姉ーずは何故かニッコニコだ。


マイケルの投げナイフを拾って綺麗に拭き上げてお母様に近づいていくとマイケルが

「レオン様、ナイフではなくこちらをお使いください。」

と先端が恐ろしく細い針を渡してきた。

また懐から出してきたけどこんな針を何に使っているんだ!?

控えていたメイド達がビクッとしていたのを見逃さなかったぞ!


「うん、ありがとう。その前に…」

マイケルの手を右手で取りボクの左手を乗せる。

左手から一瞬ホワッと光がもれた。

「ふふ♪修行の成果だよ」


「!!!!!!」

無詠唱で発動した回復魔法にマイケルは絶句していた。



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