第12話 母、襲来。



錬金魔法に疲れてきたら今後必要であろう作っておきたい魔法陣の作成を始める。


既存の魔法陣は詠唱する事で発現するけどボクがこれから作っていく魔法陣はボクのオリジナルなので詠唱などは必要無い。


まず、この世界には属性なんて言葉は存在しないので聖属性やら光属性やらの適性とか関係無いらしい。

詠唱ができるかどうかで使える魔法が決まる。


ボクのヲタ知識からすれば得意属性というのは確かに存在する。

それというのも詠唱している途中で

魔力の変化を感じたからだ。

姉様は火の魔法も使えたりするが氷の魔法の方が詠唱しやすいという。

兄様はそれとは逆で火の方が詠唱しやすいと言っていた。

ここでの判断基準は全部詠唱できるけど詠唱しやすい魔法があるという事。


この世界の魔法全般に言える事は

詠唱して魔法陣発現、そこにトリガーとなる魔力を送ることで魔法が発動するんだけど

詠唱した時に発現する魔法陣のことなんて一部の研究者以外はほとんどの人が気にしてはいない。

気になったとしてもわからないのだ。

そういうモノなのだと思って何も考えずに魔法を使っている。

で、その魔法の元となる魔法陣って誰が考えたかっていうと例のイケオジなんだよなぁ。

人々はイケオジが作った魔法陣を呼び出して使っているということ。

なので誰が使っても効果は同じなのだ。

例えばイケオジの作った回復魔法は自然治癒力を魔力で加速させて治癒を早める効果がある。

それじゃ戦闘で切断されたり病で腐らせてしまった欠損部は治らない。

切り傷や打撲、風邪程度といった放っておけば治癒するようなモノにしか効果が無いのだ。


なのでここは前世の知識を活用して細胞レベルの治療を回復魔法として作っていく。

DNAに刻まれた体組織の記憶を読み取り細胞の活性化、増殖を促す事でどんな傷でも再生させるのがコンセプトだ。

読み取り・活性化・増殖・復元。

この4つの流れを1つの魔法陣に組み込んでいく。


………………。


おっと、思ってたより簡単にできたぞ。

結局は魔力をどう変質させてどう動かすかっていう所がキモか。


ふむ。

回復魔法を作っている時に思いついたのは復元魔法。

こちらは生物以外に使える魔法だ。


考えたのは次元魔法の応用で壊れた物の時間を巻き戻す事によって新品同様にしてしまえる魔法。

壊れたパーツや破片が全て揃っていれば復元可能という優れもの!

生物にも使えると思ったんだけど時間の操作が絡むのでセラフィ様から例の警告が送られてきた。

『生物への時間操作は不許可です』

だそうだ。

そりゃそうか、下手すりゃボクが認めた生物は不老不死に出来てしまうからね。

セラフィ様もよう見とる。


さてさて、現状ボクが使える魔法は

・この世界の既存魔法全般

・オリジナル転移魔法

・オリジナル収納魔法

・オリジナル錬金魔法

・オリジナル回復魔法

・オリジナル復元魔法

・オリジナル絶対防壁(仮)


こんなとこかな。

また何か思い付いたら作るとしよう。



・・・・・・・・・・



お披露目パーティー5日前


別荘について来たメイド2人はボクの修行生活に慣れてきていた。

最初は嫌々感ハンパなく、お礼を言うと「ハァ、仕事ですから」と素っ気なかったので以前のボクを考えると仕方がないと割り切っていたのだが

少し前からボクに優しく接してくれるようになっていた。

悪戯ミニオークが心を改めて真面目になったのだ。

伯爵家次男と認めてくれたのだろう。


そして事件はおこる。

鍛錬に一区切りつけ伯爵家の屋敷に戻る事になってしまった。

ギリギリまでここで鍛錬する予定でいたんだけどお母様襲来。


「レオンぢゃああああん!!

なんで帰っでごないのぉぉぉ!

屋敷が嫌になっぢゃったのぉぉぉ」


号泣である。


朝方、別荘の外で朝の自己鍛錬をしていたらコレだ。

慌てて別荘に戻るとロビーで泣き崩れているお母様がいた。


「お母様!どうしたんですか!?」

「レオンぢゃあん!!って

どちら様ですか?」スンッ

「え?」

「は??」

「いや、は?じゃなくて!

レオンですよ!忘れたんですか!?」

「嘘よ!レオンちゃんはもっと丸々とした可愛いお肉ちゃんだもん!」


お母様からのお肉ちゃん呼ばわり…

普段からそんな風に見てたんですか

そうですか…


「鍛錬で痩せたんですよ!」

「嘘嘘!!そんなに早く痩せるわけないじゃない!

私の可愛いお肉ちゃんをどこへやったのよ!」


すでに名前すら出てこないとか…

人の好みに水を差すつもりは無いがこのままじゃ埒があかない。

お母様の両頬をピシャリと軽く押さえ込みこちらに顔を近づける。


「お母様、よく見て?ボクですよ。

あなたのレオンです。」チュッ


21歳の若く美しい母をジッと見つめ

軽く頬にキスをしてニッコリと微笑んでみる。



「本当にレオンちゃんなの?」

「本当にボクですよ。」


付き添いのメイド2人と騒ぎを聞いて駆けつけた護衛騎士に目をやる母様。

そして頷くメイド2人と護衛騎士。


「あら?あらあら!コレもアリね!

いえ、アリ過ぎで困っちゃうわ!

私にはレックスがいるのにぃ!」


頬に手をやり体をクネクネとしながら

「やだぁ」「どうしましょう」

「レックス、ごめんなさい」とわけのわからぬ事をつぶやきだした。


何言ってんだこの人?

そしてボクのことコレって言った…




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る