第9話 錬金魔法


元の世界から戻ってみると時間はし

っかり経過していた。


転移するときに出発した時間に戻るように指定したんだが頭の中に

【時間の超越は不許可です】

とメッセージが浮かんできた。

どうやらボク自身が時間を移動するのは禁止されているようだ。


セラフィ様、ちゃんと仕事してるんだね。


今日の予定は午前中にお兄様と剣術の修行、午後からは魔法の修行だったんだけどそれはキャンセルとなりパーティーに着て行く衣装合わせの為に街へ行くらしい。

こちらは伯爵家、領主なのだから本来なら屋敷に来てもらえばいいんだけど急遽決まった事だから間に合わないと。服屋さんも大変だ。


せっかく魔法陣の謎を解いたんだ。

自分だけのオリジナル魔法を作りたいんだけどなかなか時間がとれないのが現実で、寝る前まで我慢するしかないようだね。



・・・・・・・・・・



午後、街の高級服飾店


お兄様とボクの衣装はすぐにきまった。

問題は…


「レオン君、これは?」

「レオン君、こっちは?」

「レオン君、これなんてどう?」


前世でも任務で女性とお付き合いしたことはあったけど

どの世界でも変わらないのは女性のこういうところか。


「レオン?お母様のも見てくれるかしら?」


……。


「お母様はお父様に見てもらった方が」

「あの人ならさっさと逃げたわ。」


ぐっ!あの脳キン!


「そ、そうだ!こういうのは王都の生活が長いお兄様の方が詳しいのでは?王都の最新のデザインとか知っているでしょう!」

「なっ!この兄を身代わりにするのかい!?」

「身代わりだなんて人聞きの悪い。自慢の兄上のセンスを披露して欲しいのです。」

「そ、そうなのかい?それじゃあ仕方がないね」


ふ、チョロい。


「ではボクは露店を見てまわってくるので後はお願いしますね」ニヤリ

「な?レオン!?」

「レイナルド、何をしているのです。早くこちらにきなさい。」

「お兄様!レイラのドレスもですよ!」

「謀ったな!レオン!!」


なんだか兄様ががるーまチックな言い回しをしてくるのが少し面白い。

とにかく脱出成功だ。

これで目的を達成する事ができる。


まずは魔鉱石を入手する事。

実験もしたいしできるだけ多く購入したい。

そして1人の時間を作る事で成し得る事がもう一つ。

元の世界で買ってきたお菓子の出所を隠すためのアリバイ作りだ。

小瓶などでこちらの世界で不都合のないようにしておきたい。


護衛の騎士が2人ついてきてるけど他の領民が気を使うから少し離れた所で護衛するように言っておいたのでボクが何を買っているのかまでは気にしていないだろう。

安く買える露店で質の良い物を透視スキャンで選別しながら結構な数を購入した。

これを家で加工してアクセサリーにするのだ。

出来上がった魔鉱石アクセサリーに魔法陣を刻み込めば魔導具ができるはず。

違和感無く身に付けておける魔法ってわけだ。


買い物も済ませたし服飾店に戻ってみるとお兄様が真っ白に燃え尽きていた。

「待っていましたよレオン」

「お兄様は情けないです!」

「さ、早くこちらに来て選ぶのです!」


まだ続いてたのかよ…



・・・・・・・・・・



ようやく2人のファッションショーから解放され帰宅できた。

これから楽しい楽しい実験の始まりだ!


実験といっても何も難しく考える必要はない。

想像、魔法陣の構築、実験、そして結果。


まずは今からの作業の流れは

魔鉱石から不純物を取り除き圧縮し形成する。

そこに魔法陣を刻み込む。

出来上がった物が上手く機能すれば成功だ。


無から何かを生み出すわけじゃない。

第一そんなことできない。

魔法陣構築までは案外簡単な作業だ。

一連の作業を総じて錬金魔法とする。

魔法陣はあるが術式とかそんなモノがあるわけじゃないので錬金術ではなく錬金魔法。


作業用の魔法陣を紙に念写して魔法のスクロールにする。広げたスクロールの上に対象物を置き魔力を流して頭の中の設計図通りに魔力を操作すれば出来上がりである。


では始めるとするか。

少し大きめの紙を用意して頭の中で構築した錬金魔法の魔法陣を念写。

念写自体は魔力を使用して紙に焼き印を刻むような形にする事で可能だった。

よしよし、良い出来だ。

魔法陣の上に買ってきた魔鉱石の塊を1つ置いて魔力を通し不純物を取り除いていく。

質の良い物を選んだつもりだったけど四分の一ほどが不純物だったようで結構縮んでしまった。

でも不純物を取り除いたおかげでランプの光を通して光る魔鉱石はとても綺麗だ。

アクセサリーにしても違和感なく見えるはず。


次に不純物の無くなった魔鉱石を圧縮して密度を高める。

これをしておけば魔力の出力が大きく変わるはず。

よし、いくぞ!


パキッ


あ!割れちゃった…


ふむぅ。

削りだしたままの魔鉱石はいびつだから錬金魔法の圧縮のように平均的に圧力がかかると脆い箇所が出てきてそこから割れてしまう感じか。

魔法といっても万能ではなく

、現実の法則みたいな事も考えないとダメってことか。


よし、先に形成して圧縮しやすい形にしてみよう。


・・・・・・・・・・


成功したのはそれから約2時間後。

不純物を取り除き圧縮しやすい形に形成する。そしてアクセサリーとして使えるサイズに圧縮したらそこでさらに形成。

ここでまた問題発生。


圧縮して超硬度になった魔鉱石の形成が思った以上に難しかったのだ。

急激に魔力を注いでしまうと形成途中で割れてしまう。

ゆっくりすぎると形成に至らない。

圧縮魔鉱石の形成に必要な魔力を探るのにかなりの集中が必要だった。

一度成功してしまえばそこまでの過程を盛り込んだ魔法陣を構築できる。

つまりは最後の形成まで一気に片付けられるはずだ。

後は注ぐ魔力の量と形を決定する操作さえボクが覚えれば完璧だ。


よし!やるぞ!!


コンコン

「レオン様、食事の支度ができましたのでおいでください。」


……。


自由が欲しいです。



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