第3話 帰還
母・姉・ボクの3人で昼食後のティータイムを過ごしていたら執事のマイケルが優雅に挨拶をしつつ報告にやってきた。
「旦那様とレイナルド坊ちゃんの馬車が間もなく到着なさいます。お出迎えになられますか?」
「まぁ!大変!2人共、玄関ホールに急ぎましょ!」
お母様は嬉しそうな表情を浮かべ1人でパタパタと走って行ってしまった。
旦那大好きなのね。
「レオンくん、私たちも行きましょう。そ、それでね、危ないから!凄く危ないから!てててて手をちゅないで行きましょぅ…」
噛んだ。
『ちゅないで』だと…
お姉さま…
可愛いが過ぎるんじゃないか!?
「お姉さま」
「さま?」ピクッ
なんだよこの威圧感は…
「お姉ちゃま、ボクは転んだりしませんよ?」
「お姉ちゃまが転んじゃうから!」
なんでだよ!
しかしここでツッコミを入れるのは三流、無駄な話をするのは二流。
ボクは何も言わずにお姉ちゃまの手をとりキュッと握る。
一流だからね。
なんの一流なのか…
「お姉ちゃまは変わらず優しいのですね。こんなに醜く太ったボクなんかに…」
「何を言うの?レオン君は私の大切な弟なのよ?当たり前じゃない。
あなたが生まれた時に感じた感動は真実なのだから。
あなたが今の姿になる前は将来この綺麗な子と結婚するんだって心に決めていたほどよ?今じゃこんなに丸々と成長して…」
それは暗に今の醜いデブは結婚対象外と言っているようなモノじゃ…
子供とは残酷なものなのだと改めて感じた。。。
お姉ちゃまの手を取り玄関ホールへの階段を下りていくと
大きなドアが内側へと開く。
「愛しのマリアナよ!帰ったぞ!」
「あなた!逢いたかった!」
父の胸元に飛び込むように抱き付く母。
その後もチュッチュムチュムチュと濃厚なヤツをぶちかますバカップルぶりにドン引きの姉とボク。
「寝室へ行こうか」
待てコラ
「あなた、それよりもレイラとレオンにも顔を見せてあげてください」
「あっ!」
あっ!じゃないよね?
昼間っから盛ってんじゃないよ。
まったく…
「レオン!パパだぞぉ♪
愛しいお前の顔を見せておくれ!」
パパだぞぉって…
今忘れてたよね!?
さらにお母様のお母様にお父様のお父様をぶち込もうとしてましたよね!?
我が父は下半身に脳があるんじゃないのか?
だがボクは大人だ。今は子供だけど…。
せっかくなのでサービスしておく。
「お父様、お帰りなさい」ニ、ニコッ
オークのスマイルが人族に通じるかはわからないが一応家族サービスである。
「ふぉぉぉぉっ!!!
聞いたか皆の者!
レオンが、レオンが!
おかえりなさい、パパ大好き♪と!
おぉぉぉ!少し見ない内に立派になって…パパ嬉しいぞぉぉ!!」
号泣しながらボクを抱き上げて頬ずりしてくるがおヒゲが痛い!
そして凄い妄想力だ。
後付けがエグい。
さらに言うなら屋敷にいなかったのはほんの一週間ほどだ。
メイド達はミニブタに頬ずりする伯爵家当主にドン引きしている。
愛は盲目という。
親の愛を感じるのはなんだかこそばゆいけど嫌な気持ちにはならない。
この世界のボクは醜くとも家族には愛されているのかと少し嬉しい気持ちになった。
「父上、少し代わってくださいよ、独り占めはダメですよ」
「おぉ、すまないレイナルドよ。
あまりの感動に我を忘れてしまったわ!
レイア!良い子にしていたか?」
?
気のせいか
お父様は姉様の方にターゲットを変更したようで助かった。
あのジョリジョリはなかなかの凶器だ。
お姉さまと話をしていたお兄様がこちらへ近づいてくる。
「レオン、ただいま♪
少し見ないうちに大きくなったね。兄は嬉しいよ」
それは嫌味か?嫌味なのか?
いや、そうじゃないな。
この家族からは嫌な感情を向けられる事はない。
少し涙を浮かべて笑顔を向けてくる優しげなイケメン君。
「おかえりなさい、お兄ちゃま」ニコッ
「うんうん、ただいま」ニコッ
うん、お兄様とは仲良くしたい。
この家族の中では常識人と見た。
「さあ、お疲れでしょう。
湯の用意もできてますよ、先に疲れを癒やしてきてください。
お話はそれからにしましょう」
お母様に言われそのまま浴室へ向かう2人を見送り
一度自分の部屋へ戻る事にした…
のだが。
「あの、お姉ちゃま?」
お父様のヒゲ攻撃から解放されたお姉ちゃまに服を掴まれて移動できないでいた。
さらにお母様にも捕まった。
「どこへ行くのかしら?
これから家族でお出かけしますよ」
どうやら外食するようだ。
能力の訓練とかしたかったんだけど
なかなか1人の時間は作れそうにないなぁ。
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