第8話
エスカレーターを下って行くように体調が衰えてゆく。
肉体が滅び魂は故郷の星へと帰るのだ。
後悔はない。。人間のいずれは辿る道だからだ。
もう友人にも姉や妹にも連絡はしない。もちろん家族にもだ。人の不幸自慢など誰も聞きたくはない。
ペルセウス座が好きだった。プトレマイオスが作成した星表、トレミー48星座の内のひとつである。
ゼウスとダナエーの間に生まれたのがペルセウスだった。
ある日、ペルセウスはセリーポス島の領主からメデューサの首を獲って来るように命じられる。
メデューサの首を獲ることに成功したペルセウスは、海に棲む魔物、ケートルの生贄にされようとしていたアンドロメダをも救ってしまう勇者だった。
ペルセウスは右手に剣、左手にメデューサの首を持っている。
ペルセウス座流星群は毎年7月20日頃から8月20日のあたりに出現し、8月13日のお盆の頃に極大を迎える。
颯太がまだ小学校低学年の頃、深夜に颯太を起こし、クルマで山の展望台まで行き、双眼鏡でペルセウス座流星群を見せてやろうとした。
「ほら流れた! 見えたか?」
「ううん、見えなかった」
颯太は残念そうに双眼鏡を下ろした。
「ほらまた流れた!」
颯太は私の指差す方向を見た。
「見えたよパパ、見えた!」
息子は喜んだ。
私は父によく自然と親しむことを教わった。
だから颯太にも自然の雄大さや神秘性を教えてやりたかった。
ペルセウスの神話も話してやった。
ペルセウス座流星群は息子、颯太との思い出であり、家族との絆だった。
もう晩秋になり、ペルセウス座流星群を見ることが出来ない。
ましてや目の不自由な今の私には星すら見ることが出来ない。
そして来年のペルセウスを見ることはもうないだろう。
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