𐎢‎𓊆143録𓊇𐎽 TEA TIME


「ズズズズ………………あっ、うまっ」


「薬膳と言いながらも、しっかりとした甘さがあるのが特徴なんですよ〜♬」


「漢方薬みたいな味がするんかと思ったら、全然そんな事ないな。普通に…………紅茶だな」



淹れてもらった紅茶を啜ってみると、想像していた味よりも甘さが強く出ていて、チェーン店で飲む紅茶よりも美味しかった。


砂糖も入っていないのに、ここまで甘くなるのは不思議だな。


薬膳………という感じが全く無い。体に良い物は基本的に苦いものばかりで、好きで口に入れるのは、とんだ物好きしか居ないくらいのもの。


美味しく食える飲めるものなんて………私の生きてきた中では聞いた事が無い。「漢方薬うめぇ!!」とか言って、正露丸や朝鮮人参をボリボリ目の前で頬張られたら………絶対に引く気がする。 ドン引きにする予感しかしないですわ。


前世の配信中に腹痛くなった時、配信終わりに正露丸を貰って飲んだ事があった。「よく効く漢方薬だ」と言われて、試しに飲んでみた結果………余計に悪化してしまったような覚えがある。


本当は毒薬を飲まされたのか?と思えるくらいに体調が悪くなって、社長に「何飲ませてんだよ!!」と、本気でキレた覚えがある。


気を遣ってくれて飲ましてくれた事は分かっている。分かっていても、その時は生理も被っていた腹痛もあったせいで機嫌もあまり良くなかった。


後々になって社長には「八つ当たりみたいなことをしてすみませんでした」と謝りました。


流石に、いくらなんでも気を遣ってくれた人に対してキレるのは良くないと…………生理だの何だのは言い訳にするつもりは無かったから。


女を言い訳に謝らない、謝罪しない奴って居るけど………そういうタイプの本物の社会不適合者にはなりたくない。


配信者、VTuber、YouTuberっていうのは社会不適合者がやる仕事というイメージが強過ぎるというか…………実際にそうなんだけどね?って言えてしまう部分も多い事と、この中でVTuberという存在の声が大きいせいで、余計に「そういった活動者は社不の集まりなんだな」といった印象が世間に定着してしまっている。



私も加担してしまっていたこともあり………過去の配信でも「私みたいのは人間の底辺だから」、「人間の底辺で、たまたま運良くバズっただけの歩くコンテンツ」と、自虐だけではなく、他の誰かにまで飛び火しまくっている事を言いまくっているアーカイブが現存している。


登録者1000万人超えている………今はもう、1100万人に差し掛かろうとしているVTuberの発言に影響力が無いわけが無い。


前世の時に、豐穣熾カレンがここまでの大きな存在になるなんて思わなかった····················所詮、何百万人チャンネル登録者数が居ても、VTuberなんざ知る人ぞ知る存在からは抜け出すことは出来ない………大衆向けのコンテンツなるほどの影響力には到底なるわけがない。


VTuberなんて、所詮はインターネットの中でしかチヤホヤされない偶像だと思っていた。


そのはずだったのに…………カレンが大きくなり過ぎた。カレンの存在が多くの人に周知されるのは嬉しい反面、カレンという偶像アイドルを薄汚くさせてしまったのは····················紛れもなく私である。


私がカレンを使ってクソみたいなことを言っていたせいで、カレンのイメージが悪くなってしまったのもある。


カレンのアンチを必要以上に生み出してしまったのは、中の人である私の責任だ。ひたすらヲタクに喧嘩を売るような発言をしていれば、アンチが増えるのが当然の流れ。


アンチも拡散してくれるからアンチも増やそう!!って浅はかな考えをしたため、それが豐穣熾カレンのイメージを悪くする………悪くなってしまったはずなのに、2000年という長い年月の間に、伝説となって大衆に受け入れられて、社会不適合者の代表格のような存在に成り果てて………



世の中全体に受け入れられている社会不適合者というのも、日本語としておかしい。おかしいというか、エラく歪んでいるというか………そんなところだろう。


矛盾という単語だけでは包むことができないほどの矛盾を成立させてしまっている。


このような存在を伝説として祀り上げている世の中が狂ってる。








___カチッ、カチッ………カチッ、カチッ………










「ん·························あり…………?」


「ゆみり氏、ライター貸そうか?」








__カチッ、カチッ………シュボッ







「あっ、付いた」


「ライター要る?」


「ホテルの部屋にいっぱいあるから平気」


「分かった」


「「·······················································」」



ミーシャちゃんとレムリアちゃんが、2人揃ってライターを片手に構えて私の方を見つめていた。


それに、喫煙者ではなかった2人がライターを持っているということは…………わざわざ私のために用意した可能性しか無い。


楓夏依のために用意するとは、今までの関係性を見て有り得ない。



····················私の望んでいる、VTuber事務所の同僚の関係性が、もう築けそうにないのだなと思うと、今の気持ちを何て言い表せばいいのか分からない。

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