𐎢‎𓊆142録𓊇𐎽 軋轢


「タバコくらい、私がいくらでもあげるっていうのに〜。わざわざ自腹で買わなくても私が嫌っていうほど貢いでやりますわ」


「それはそれで何か嫌だわ」


「タバコという形で、ゆみりにダイレクトスパチャしたる」


「ヲタクから見たら、女VTuberに相応しくないダイレクトスパチャの形だね」


「VTuberだって人間なんだから。タバコくらい吸うだろ?偶像崇拝の対象になっているからって、別にタバコ吸っちゃダメなんて決まりないっしょ?そんなんまで禁止されるとか、どこの宗教やねん!!って話になる」


「タバコ吸うの禁止っていう宗教ってあるの?」


「世界三大宗教は基本的にタバコとかってダメなイメージがあるんだけど」


「キリスト教徒の人、普通に吸ってね?」


「なんだったら、仏教の人ですらも普通に吸ってるでしょ?住職の人だって普通に喫煙者居るべ」


「イスラム教がそこら辺めっちゃ厳しいイメージがあるわ」


「あれダメこれダメっていうのが凄い多いのに、よく信仰しようって思うよな………馬鹿にするとかじゃないけど、そういう信仰でストレス溜まってるとか、馬鹿らしくならないのかな?」


「ちゃんと信仰している人にとっては、なんて事ないことなんじゃないのかな?って思ったりしている」


「そういうもんかね?」


「よう分からんけども」


「私達、無宗教者だから全然分からんよな〜」


「ゆみりさん、お待たせしました〜」


「紅茶と茶菓子になります」


「ゆみり、毒盛られてるかもしれないから気をつけた方がいい」


「楓夏依さん、なんでそういうことを言うんですか?人としてどうかと思いますよ?」


「何とでも言ってくださいよ」


「私達の分は用意しないっていうあたりですよね。性格の悪さが滲み出ていますもん」


「私、ゆみりさんが好きなだけであって、CRY.STi⟬A⟭LLIZATION2期生を箱推ししているわけじゃないんで」


「私もミーシャと同じ意見です」


「真似しないでよ」


「それはお互い様でしょうよ」


「···································確かに」



休憩室の空気が一気に殺伐となってしまった。これは……………私が原因ということになるのだろうか?

私が何か切っ掛けになるようなことをしでかしたわけでもないのに、私が元凶となってしまったという状況。


私みたいな、中身ヲタ女を取り合うように喧嘩していて…………何が面白いのか?私ごときを取り合ったところでメリットなんて何一つとして無い。


ヲタクを拗らせてVTuberになって、たまたまCRY.STi⟬A⟭LLIZATIONという大手の箱に属することが出来て、好きなように配信していたことがバズっていただけで伝説となってしまった…………自分でも、どこに魅力があるのか一切不明なくらいのクソ女なのに、何をそんなに執着している?


私に執着するよりも、そこら辺に居る地下アイドルでも推している方がよっぽどマシ。好き好んで"中村ゆみり"という人間を推すべきではない。



···············殺伐とした空気を緩和するために、ふざけたような言い方で「私なんて推したところで誰も何も得しないって〜☆損はあっても得はないですよ〜ん☆」と言ったと仮定した未来はどうなる?



・・・・・・・・・・・駄目だ。楓夏依あたりが何か言ってきて、そこにミーシャちゃんとレムリアちゃんも絡んでくるという…………更に状況がややこしくなることが大いに予想される。


私という存在のせいで空気が殺伐とすると、私自身でもどうすることも出来なくなるものなのだなと知ることになった。知るはめになってしまった、という言い方が合っているかもしれない…………



アニメでよくある、男主人公を取り合っているヒロインの行動のソレを見せられている。


私………れっきとした女なのだが。女を女が取り合うという、フィクションでは珍しそうで珍しくもないか。


だが、女主人公を取り合うのは基本的に男だよな。「兄に愛されすぎて困ってます」的なもので、逆ハーレムを築き上げるのがテンプレートとなっている。


そのテンプレートを崩すかのような、何とも言えないハーレム状態…………CRY.STi⟬A⟭LLIZATIONの時は楓夏依しか私に好き好きアピールをしてこなかったので、そういう時もあるよな………というくらいにしか思っていなかった。


しかし、現世では見た目がカレンになってビジュアルのレベルが格段に上がった……のが原因としか考えられない。


ミーシャちゃんもレムリアちゃんも、前世の私の姿を知らないから、こうやって私の事を好きだなんだって言えているだけ………前世の私が芋女って知った時、それでも同じように振る舞えるかっていう確証は無い。


楓夏依は言わずもがな、カレンの姿よりも中村ゆみりという芋女を知っている状態での好き好きアピールが止まらないわけです。


前世の私を好きだと言ってくれているのは嫌というほどに教え込まれている。今でも、見た目がカレンとは言え、中身は素の中村ゆみりであるわけだ。


楓夏依の執着の度合いからして、私の見た目が変わったくらいで、私に対しての交換が変わるわけがないのは、潜在意識でも分かっていた事。



「見た目違うから嫌い」とか言われたとしたら、「ええっ!?」って逆に驚いていたな。





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