𐎢‎𓊆141録𓊇𐎽 格差


2人には「私と同じ対応を、楓夏依達にもしてもらえませんかね?」とハッキリと物申してみたところ、無言でジッと見られた後………右腕をレムリアちゃん、左腕をミーシャちゃんに抱き着かれるように拘束されてしまった。


なんて、リアクションするのが、正解なのだろう。私には最善の解を導き出せる気がしない。



まず、私の腕にしがみついている理由が分からない。何も言わずにしがみついている。そして、私が歩くペースに合わせて体勢を維持しながら2人も歩いている。



私は後ろを2人にバレないように振り向いては、楓夏依達にアイコンタクトで「助けてください、お願いします」ということを訴えてみた。


楓夏依は私のアイコンタクトに真っ先に気付いてくれたものの、自分では手に負えない事態だと悟ったのか、無言で両腕で❌サインを作った。


美香と美咲は、私の目を見ようともしなかった。こういう時こそ、助け合いの精神というものを発揮するべきだろう。


簡単に私の事を見捨てるようなことをしないでくれないか?工場で戦っていた時、私が殺されかけて、そこをフォローするよりも遥かに楽な事だ。


何を躊躇っているのか…………私には見当が付きません。



「あ、あの…………レムリアさん、ミーシャさん………とっても動きづらいんですけど?」


「嫌とは、言わせませんよ?」


「嫌と言っても、私達は離れるつもりは無いですよ。本気で殺すぞ?って言われた場合などを除いては」


「その場合というのは、ゆみりさんならば絶対に招くことはしないと確証があるので。ゆみりさんの優しさに付け込んでいますから」


「そんなストレートに自分の本音を言っちゃいます?」


「気持ちというのは、素直に伝えないと伝わらないって言うじゃないですか?」


「んー、方向性をかなり間違えているような気しかしないんですけど……………?」



素直に伝えるべき気持ちのベクトルを間違えている。これは絶対に言い切れる。他人の優しさに付け込んで好き放題やっているなんて、それを本人を前にして言うべきではない。


陰口として言うのも人間性を疑われるというものなのに、そんなことを本人の前で言うなんて···············かなりの強心臓の持ち主か。


1周回って何とも思わなくなった。何とも思わないというか、清々しい告白に「なるほど、逆張りをしていった悪辣な行為というものは案外受け入れられてしまうものなのだな」という新たな思考が植え付けられる事になった。


植え付けられなくていい………要らない思考でしかない。



半ば、2人に誘われるような形で休憩室へと通された私。少し離れた距離には、楓夏依達もついてきていた。


ついてきてくれているのはいいんだが………その、私を助けるために2人に少しでも声掛け的なものをしてもらいたい。



後、美香と美咲は私のことを見てクスクスと笑って、戸惑っている私をネタにしている部分が見られたのだが…………楓夏依は途中から顔が険しくなっていって、休憩室に入った今は鬼のような形相を2人に向けている。


嫉妬、しているのだろうか?


嫉妬する要素なんて何処にあるのだろう?私のことが大好きなのは知っている。他の女と話しているだけでも不愉快に感じる性格だということも理解している。


そこまで私への思いが強いのならば、ミーシャちゃんとレムリアちゃんを私から引き剥がせばいいのでは?


楓夏依はそういう事を平然とやってのけることが出来るタイプ。それを今はやらずに、ひたすらフラストレーションを溜め続けている理由は何?


あまりに溜め込みすぎて爆発させて、その爆発に私まで巻き込まれたら嫌だな。私だけ助かっても、ミーシャちゃんとレムリアちゃんが瀕死の状態になってしまったら………それはそれで私の中にトラウマが出来てしまいそう。



まぁ、ミーシャちゃんとレムリアちゃんが瀕死の状態になるのではなく、楓夏依が瀕死になる可能性もある。


2人の実力が推し量れていない以上、楓夏依とこの2人が戦った場合の未来がどうなるかは予想が付かない。


2人が戦っているところを見て、どれほどまでの実力を兼ね備えているのかを知るまでは推測すらも出来やしない。



「ゆみりさん、ソファに座ってくださいな。今、お茶を持ってきますから〜」


「私は茶菓子の方を」



私をソファに座らせて、台所と思われる場所に駆け込んで紅茶と茶菓子の準備をする2人。


私が座っている、テーブルを挟んだ対面のテーブルには、楓夏依を挟むようにして美香と美咲が座った。


楓夏依は眉間に皺を寄せたまま、チラチラと台所の方を見ながらタバコを燻らせ始めた。


テーブルには常設の灰皿が備えてあり、そこに灰を落としながら、勢いよく煙を吐き出している。



「ふすぅぅぅぅ…………!!!!」


「私も、タバコ吸うかな…………」


「あれ?タバコ買ったの?」


「タバコの自販機あったから。そこでセブンスター買ってきた」


「あれ?パーラメントじゃなかったっけ?」


「パーラメントにしようか悩んでいたんだけど、久し振りに自腹でセブンスター買うかっ思って買っちまったい」


「あらあら〜」

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